ベルギー政府、脱原子力政策を見直し 最初の3基、操業10年延長

ベルギーのP.マニェット気候・エネルギー相は12日、エネルギーの安定供給やCOの排出抑制などのため、同国政府は2015年に閉鎖予定だった第1段階の原子炉3基の停止時期を、条件付きで10年延期する判断を下したと発表した。03年に同国で成立した脱原子力法では、国内の原子炉の運転期間を40年間に制限。ただし、実際に運転延長するために、議会や行政命令を通じて法改正するのか、あるいは同法に規定された免責事項を適用するのかなど、具体的な方策についてはまだ不透明な状況だ。

同国では脱原子力法成立の数か月後には、総選挙で緑の党が政権を離脱。それ以降の政権下では折りに触れ、閣僚や政府の諮問委員会が脱原子力法見直しの可能性や地球温暖化防止の観点から原子力を不可欠とする見解を表明していた。

しかし、昨年3月に誕生した五党による現在の連立政権は脱原子力政策の維持を明言。国内で7基の原子炉を操業するエレクトラベル社とその親会社であるGDFスエズ社に対して、国家財政立て直しのための暫定税2億5000万ユーロを課す一方、原子力も含めた長期的なエネルギー供給構造の在り方について、政府が設置した専門家グループ(GEMIX)に調査を指示していたもの。

GEMIXが1日にマニェット大臣に提出した最終報告書によると、エネルギー生産部門では2015年に脱原子力政策による運転期限を迎えるドール1、2号機およびチアンジュ1号機の運転期間を10年延長しなければ発電量の不足を補えないとしたほか、ドール3、4号機およびチアンジュ2、3号機についても20年運転延長する必要性を勧告していた。

閣議による今回の判断は、GEMIXのこの勧告に基づいて下された。マニェット大臣はGDFスエズ社など原子力事業者に対する条件として、国家予算への貢献として年間2億1500万〜2億4500万ユーロの税金を2010年〜14年まで納めるよう要請。また、2020年までに再生可能エネルギーの割合を20%に高めるという欧州連合の合意事項を果たすため、政府が来年以降必要とするこれらへの投資額のうち、少なくとも5億ユーロを原子力事業者に負担させるとしている。

さらに、原子力事業者の両社が実施する研究開発の3分の1はエネルギーの効率化と炭素の捕獲・貯蔵に当てることを言明。GDF社はこのほか、エネルギー効率化事業に従事する従業員1万3000名を維持するとともに、2015年以降さらに1万名に職業訓練を行うことになる。

このような政府決定に対して、GDF社は同日、「原子炉の運転期間延長に関する数日間の建設的な交渉内容を反映した政府の通達に留意する」とだけコメントしている。

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なお、未確認の報道によると、ベルギーと同様に脱原子力政策を維持していたドイツでも、近く発足する中道右派連立政権が18日、国内原子炉の運転期間を延長することで原則合意に達した。

A.メルケル首相のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と右派の自由民主党(FDP)は、今月末までに新たな政府を形作るべく、今後4年間の政策について協議。三党とも原子力を代替エネルギーが確保されるまでの「過渡的な技術」と位置づける一方、2021年までに国内の17基すべて閉鎖というこれまでの政策から、いくつかの原子炉を少なくとも10年運転延長することで合意したと伝えられている。


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