ドイツで右派中道・新政権が発足 既存炉の運転期間延長へ

ドイツのメルケル新連立政権が28日発足した。連邦原子力規制を所掌する新たな連邦環境・自然保護・原子炉安全大臣には、キリスト教民主同盟(CDU)のノルベルト・レトゲン連邦議会議員(=写真)(44)が任命された。それに先立つ26日、与党を構成するキリスト教民主/社会同盟(CDU/CSU)と自由民主党(FDP)の党首が連立協定に署名した。

その中で、「原子力は橋渡しテクノロジーであり、信頼をもって再生可能エネルギーでとって代わられるまでの間、活用していく」との基本的な考え方が示されている。

具体的には、「ドイツや国際社会の厳しい安全基準を遵守して、ドイツの原子力発電所の運転期間を延長する用意がわれわれにある」という。この点は、選挙中の両党共通の最大の公約の1つであった。

一方、「原子力法の新規建設禁止は存在し続ける」として、CDU/CSUの公約どおり、新たな原発は明確に建設しない方針だ。

原子力発電所の運転期間延長によって生じた追加利益の「実質的部分は、国が徴収することとする」と述べている。その収入は、「再生可能エネルギーの蓄電技術やエネルギー効率の強化などの研究」にあてるという。こういう面を含め、「運転期間延長の諸条件については、事業者と詳細を詰めていく」として、具体的な内容を今後の交渉に委ねている。

もう1つの公約であったゴアレーベン岩塩鉱の調査再開も、連立協定で明確にしている。かつての社会民主党と緑の党の連立政権は2000年に、大手電気事業者と、調査凍結で合意した。その凍結をただちに解除し、「ゴアレーベンが最新の国際基準を満足させるかどうか、国際ピアレビュー団を招いて検証する」と述べている。

さらに、岩盤の安全性が問題となっているアッセ処分実験場と旧東独のモルスレーベン最終処分場は、すみやかに閉鎖する。

一方、新連邦環境大臣へのレトゲン氏の起用は、ドイツで驚きをもって受け止められた。なぜなら、同氏は弁護士出身の法務専門の議員であり、経歴上、環境・原子力政策となんらの接点も見出せないからである。

ドイツの原子力界でも無名の人物だ。もちろん、CDU党員である以上、原子力に関する党の基本政策に忠実に従う、と考えられている。

ドイツ西部のノルトライン・ヴェストファーレン州の出身で、当選5回。連邦議会で国対委員長を務め、メルケル首相の右腕と言われている。

ドイツ原子力の次のステップは、運転期間の延長条件をめぐる電気事業者との交渉になる。レトゲン氏がどのような手腕を発揮するのか、その力量が試される場面はすぐにやってきそうだ。


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