〈日本原子力研究開発機構理事長賞〉千葉友紀子 宇都宮短期大学附属中学校(栃木県)2年 身近な放射線

最近まで私が「放射線」という言葉から連想されるものは、原爆でした。第2次世界大戦で広島・長崎に投下され多くの人が犠牲になってしまいました。普通の爆弾とはケタ外れに威力があるだけではなく、放射線による後遺症もいまだに社会問題になっています。社会の教科書や原爆に関する資料から放射線には悪い印象しかありませんでした。

しかし、昨年の秋に母が乳ガンを患い、その手術後の治療が放射線治療だと知り、放射線が医療の現場でとても重要なものだと知ることになりました。

母は、昨年の夏に健康診断で乳ガンの早期発見をしました。早期発見のおかげでガン切除の入院も数日ですみ、すぐに健康を取り戻しました。このガン検診に用いた装置が、マンモグラフィーという検査装置です。これはレントゲン、もしくはX線撮影と同じもので、乳房専用に検査するレントゲンと言えます。

X線も放射線の1つなのですが、このX線が医療で重要なことは、誰もが知っているはずです。ただ私は、この作文を書くまではレントゲンやX線が放射線と同じものだと知らなかったので、本当は放射線がとても身近なものだとは気がつきませんでした。

そして、母が放射線治療を受けていた時、初めて「放射線」が医療に使われていることを知りました。この放射線治療とは、ガンの患部に放射線を当て、ガンを治療するものです。母は、手術後に25日間の放射線治療を行ないました。

母によると、放射線を受けた所が軽い火傷のような感覚があっただけと話していました。そしてこの放射線治療は、再発防止よりもガンそのものの治療に使われていることが作文を書くに当たり調べてみてわかりました。また、手術ができない場所のガンにもこのような治療ができるようになったことを知り、よくわからない部分もありましたけど素晴らしいと思いました。

ガン治療には、手術・化学療法・放射線療法の大きく3つの方法があります。このうち体に最も負担が少ない治療法が放射線治療だと言われています。

放射線を当てられた細胞は放射線で傷つけられます。この時、正常な細胞は自己修復できるのですが、ガン細胞は自己修復できないため、増殖ができず消滅していくので、ガン細胞だけを除去できるということです。

ただ、正常な細胞にもダメージを与えるということから副作用もあります。手術に比べれば体への負担は少ないのですが、例えば頭部に照射されれば脱毛、腹部では吐き気などがその副作用です。

しかし、長年の歴史がある放射線治療ですが、ここ最近の医療機器の進歩とコンピューター技術の発展で、副作用の少ない放射線治療の開発が急速に進められていることがわかりました。

また、放射線の中でも素粒子治療という新しい治療法も実用化されてきたことも大きな医療の進歩だと思います。今までの放射線治療では治療困難なガンも、この素粒子療法で治療が可能になってきました。

このように放射線治療の急速な発展で、近い将来、ガンは手術などを行なわずに完治できる病になるのではないでしょうか。

原爆や原子力発電所の事故など、強い放射線が生態系に及ぼす影響は大きいです。これは放射線が細胞を傷つけ、正常な細胞が修復できないほどの放射線を一度に受けてしまうからです。しかし、この放射線をうまく使いこなせれば、ガン患者の体の負担を少なく治療することができます。

そして今、この治療技術はガン治療の中で最も注目を浴びています。放射線治療は、放射線利用の中で私たちの生活に最も身近で役立つ利用方法であると私は考えるようになりました。


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