〈日本原子力文化振興財団最優秀理事長賞〉木田夕菜 鹿児島市立鹿児島玉龍中学校1年 「町を冷やせ」私の自由研究記

市内を一望できる駅ビルの上に立つ観覧車。従妹と一緒に乗ったゴンドラの上から市の中心部を走る市電の軌道敷に沿って植えられている鮮やかな緑色の芝生が目に止まった。

「どうして、市電の線路なんかに芝生を植える必要があるのだろう」。

それが私の研究の始まりだった。夏休みを利用して、市役所の公園緑化課を訪ねた。

私は最初、暑い鹿児島の夏を少しでも涼しく感じられ、そして景観をよくするためなのだろうと思っていた。しかし、これは他にも大きな効果があるそうなのだ。軌道敷内を緑化することで、アスファルトやコンクリート舗装の部分と比べて表面温度が30度も違うそうだ。これにより市街地の温度を下げる効果があるのだ。

それだけではない。市役所の方のお話では、建物の屋上緑化に補助金制度をつくって支援しているのだそうだ。そう言えば、観覧車のゴンドラから見えた景色の中に、建物の屋上に緑の芝生が広がっているのを思い出した私は、今度は市内のデパートに出かけていった。屋上緑化をしたことで、今まで一番暑かった最上階が、最も温度が低くなり、冷房費が5万円も安くなったのだそうだ。

市電を動かしたり、冷房のエアコンを動かしたりしているのは電気である。そしてその電気は、原子力発電や、天然ガス、石油・石炭による火力発電にそのほとんどを頼っているのだ。

しかしながら資源の乏しい日本に限らず、電力を無尽蔵につくり出すことは不可能である。限りある資源を大切にし、これらのエネルギー資源を大切に使っていくことが望まれているのだ。

私は、自分にもできることはないかと考えるようになった。その時、ショッピング・センターのオープンに伴う駐車場周りの植林活動への参加募集の案内が目に止まった。これだと思った私は、急いで応募の葉書を書き、すぐさまポストに投函し、参加することにした。まだまだ真夏の日差しの残る9月の上旬、背中にびっしょり汗をかきながら私は、たくさんの植物の苗を植えた。

そこでは、なるべく多種の植物をわざと混在させて植えるようにしていた。それは、人工林のように単一の植物や樹木を計画的に整然と並べて植林するのではなく、なるべく自然林に近い形で植えることが大切なのだという考えに基づくものだった。

このように、市やさまざまな企業において、都市のヒート・アイランド化を防ぎ、エネルギー資源の節約のために、さまざまな取り組みが行なわれており、それは行政や企業にとって特別なことではなく、むしろ果たさなくてはならない責任として考えられていることが分かってきた。

そうなると今度は誰かに頼るのではなく、もっと身近にできることはないかと考え始めた私は、以前に参加した打ち水大作戦のことを思い出した。母のけげんそうな視線を横目に、洗面所のバケツにお風呂の残り水を汲み、私は陽炎立ち上るアスファルトの駐車場にかけ下りた。小さなじょうろで水をまき、しばらくしてから地面の表面温度を測ってみた。すると、何と3度も温度が下がったのだ。たったこれだけでこんな効果が得られることに驚いた。それだけではない、空気の対流が起こり、駐車場からひんやりした風が部屋の窓から吹き込んできたのだ。

私の研究はまだ終わっていない。次は何ができるか今も考え続けている。町を涼しく快適に、そして私たちの生活と深く関わり、決して欠かすことのできない大事なパートナーであるエネルギー資源をずっと大切に使い続けていくために、だれか任せではなく、一人ひとりが今できることから始めなくてはならない。

町に緑が映え、暑い日は木陰で涼をとりながら、きれいな空気を思い切り吸える、そんな町にしたいと思うのだ。


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