〈日本原子力文化振興財団最優秀理事長賞〉山田耕史 宮崎県立宮崎大宮高等学校1年 幸福を招くための原子力・放射線

夜、明かりの灯った快適な部屋で過ごしている。6年前に、大腸ガンが見つかった祖父も、今ではすっかり治った。

この関係のないように見える2つの共通点、それが、原子力と放射線だ。私たちは、生活の多くを、原子力・放射線の恩恵に頼っているといえよう。

太古の人々は、闇を嫌い、獣を恐れた。他の動物と何も違わぬ、むしろ、弱いかもしれない人間。その人間が、今日のような文明社会を持つに至った、大きな要因が、火というエネルギーを手に入れたことにあるだろう。

時は流れ、1895年、物質を透過する不思議な性質を持った、X線が発見される。そして1938年、核分裂反応が確認されたことで、原子力が人間の知るところとなった。その後の、人類のエネルギーに対する挑戦は甚だしく、核分裂確認から4年後の1942年には、世界初の原子炉が完成した。

以後、原子力発電は世界各地に広がり、1975年には、世界の総発電量の5.4%を占めるようになっていた。安定して大きなエネルギーを取り出すことのできる原子力は“夢のエネルギー”だった。だが、とてもリスクが大きく、79年のスリーマイルアイランド原子力発電所事故、86年のチェルノブイリ原子力発電所事故など、事故が相次いだ。また、兵器としても世界中に蔓延してしまった。

つまり、原子力は、20世紀最大の発見であるとともに、最大の反省であるといえる。

原子が崩壊する際に発生する、放射線はどうであろうか。こちらも、原子力と同じく、急激な発達をとげた。物質を透過する性質を持つ放射線は、人の知りえなかった世界を明らかにした。CTスキャナーの発明である。CTでは、体内の鮮明な3次元映像を得ることができる。今でも技術は発達し続け、顕微鏡レベルの物まで見ることができるようになった。工業機械の内部検査の迅速化が実現したのも、この技術によってである。

放射線の、もう1つの性質の細胞を傷つけるという作用は、医療に応用された。放射線を使い、ガンや悪性腫瘍の細胞を殺すことができるのだ。この放射線療法では、副作用が全身に及ぶ心配がない。さらに、体内深部にガンや腫瘍があっても、切開の必要がないなどのメリットがある。放射線による殺菌も、同じ技術だ。

近年では宇宙観測においても、放射線、なかでもX線は欠かせないものとなっている。高エネルギーの天体からは、光は出ていなくとも、X線が出ている場合が多い。光では見つけることのできなかった天体も、X線でならば見つかる可能性が大いにある。今後の宇宙観測においても重要な役割を担うことだろう。

原子力・放射線は、その特殊な性質により、これからも発展をとげる分野だ。その上で、憂慮すべきこと、その対策について考えてみたい。

まず原子力だが、とても効率のよいエネルギーであることは間違いない。その上、二酸化炭素を排出しない。これらの点から、原子力発電は、環境問題が大きく扱われる中で有効な発電方法だ。工業発展を望む発展途上国や、化石燃料からの脱却を目指す国は、原子力に頼ろうとしている。だが、原子力には、無闇矢鱈(むやみ・やたら)に手を出してはいけない。事故や兵器転用の可能性が否めないからだ。技術は発達し、安全性も向上しただろうが、原子力には常に危機感をもって接していかなければならない。兵器転用に関しては、国際的な監視の権限を強めていくべきであろう。国家間だけでなく、人々が常日ごろから、原子力に対して深く注目していくことも大切だ。

放射線はどうであろうか。やはり、最も恐ろしいのが被ばくである。いくら放射線が便利だとはいえ、過度の照射は危険なのだ。医療現場など、扱う側の責任能力を高め、確立せねばならない。社会、科学、家庭に激的な変化をもたらした原子力・放射線は、どのようにすれば、人類の幸福に寄与することができるのだろうか。その答えは平和利用と安全利用だ。発電や科学のためだけにと限れば、原子力は、清らかな原子力となることができる。

さらに、利用にあたっての心構えを変えるだけで、防ぐことのできる事故は、たくさんあることだろう。造り出したのも人間、操るのも人間。すべての責任が人間にあることを自覚するだけのことだ。

安全利用へは、技術面からのアプローチが可能だ。原子炉の設計・運転を見直せば、さらに安全性は高まっていく。技術革新により、原子力への信頼が増せば、脱化石燃料も可能になる。放射線においても、研究が進み、放射線にしかできないことを引き出していけば、その存在意義も大きくなる。原子力・放射線の大きな汚点である危険性は、心の持ち方で補うことができる。そればかりか、今後の発展によっては、真の”夢のエネルギー“になるだろう。今すぐにでも人を幸せにする可能性が、そこにはある。

20世紀の反省を生かし、平和と喜びにあふれる21世紀を築かねばならない。


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