東芝、磯子エンジニアリングセンター新棟完成 原子力世界戦略の拠点確立

東芝は原子力事業をグローバル展開する中核拠点として、横浜事業所内に世界最新鋭の「磯子エンジニアリングセンター新棟」(IEC‐T=写真)を完成、11月2日に完成披露式典を行い稼働した。

原子力発電はエネルギー・セキュリティーに加え喫緊の課題である地球温暖化防止の切り札として再認識され世界的に新設・導入計画が相次ぎ、日本メーカーが主契約者となり海外でプラント建設のイニシアチブをとるグローバル新時代≠フ幕開けを迎えている。

米国WHを買収、世界の原子力のリーディングカンパニーを目指す東芝は、プラントのライフサイクルを支える保全技術・管理と工期厳守・予算内完成のカギを握る原子力エンジニアリング力で飛躍、先行し世界戦略の基盤構築を目指す。同時に原子力発電の日本の強みを海外に移転し、また将来の国内産業力を活性化するためにも、新棟を拠点に国内サプライチェーン・メーカーや電力会社との連携を深め、さらに米国はじめ世界各国企業と多角的なコラボレーションの輪を広げ、原子力ビジネスを通じて地球的課題解決に貢献する方針である。

IEC新棟は昨年10月に着工、鉄骨造5階建、延床面積約2万2000平方m。急激な世界金融不況の直撃を受けながらも原子力を戦略事業と位置付け設備類含め百億円を投資、エンジニアリングの品質・信頼性向上に取り組む。特に、非常時のライフラインを確保するため大地震にも耐え、事業の継続性(BCP)を確保できるよう最新の免震構造を採用。

また、24時間体制でグローバルなエンジニアリングを実現するため、設計を立体視できる3D‐CADシステムや世界最高速レベルの通信ネットワーク、最新のセキュリティー・システムなどを装備、エンジニアリング・インフラを強化した。さらに、照明人感センサーなど多くのエコ技術を採用し消費電力とCO発生量を従来比約3割削減した。

新棟完成披露式典では記念植樹式が行われ、佐々木則夫東芝社長が小彼岸桜の苗木の土にクワを入れた(=写真左)。小彼岸桜は他の桜より一足早く開花、枝いっぱいに濃いピンクの花を咲かせるところから、佐々木社長は「(原子力で)どこよりも一歩先行し、世界へ枝を茂らせ毎年満開にしていきたい」との思いを込め、東芝の原子力のシンボルともなる苗木に入念に盛土した。

東芝・WHグループは世界10か国で112基の原発を建設、世界トップの座にあり、2015年には39基の新設受注、1兆円規模の売り上げを目指し原子力ビジネスで最先端を走る。当面の主戦場である米国では、2月に受注したサウステキサス・プロジェクトのABWR2基の供給メーカーとして米原子力規制委員会(NRC)から8月に日本企業として初めて能力認定された。両機のエンジニアリングはIEC新棟が担い、米国シャーロットに8月に完成したエンジニアリング拠点と設計部隊を中心に連日シビアな作業が始まった。


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