JCO事故から10年 東海村で安全フォーラム 「事故を風化させぬ」気持ち新たに

JCO臨界事故から10年、事故の教訓を踏まえた原子力安全規制や防災体制の取組を地元目線で評価するとともに、今後の地域共生について議論する「原子力安全フォーラム」(東海村、日本原子力文化振興財団主催)が7日、東海村の文化センターホールで開催された。

冒頭、事故当時、原子力安全委員長代理として現地で事故収束に当たった住田健二・同財団副理事長は、事故による2名の作業員の死を悼み、「事故を風化させぬよう前向きに活かしていく」などと本フォーラム開催の意義を述べた。

パネルディスカッションに移り、小野寺節雄・東海村経済課長は、事故通報を受けて、防災無線発報後、住民からの問い合わせが殺到したことを振り返り、「住民にどのように説明するか」、「住民の視点は行政に向けられている」などと当時の状況を述べた。また、木村雅人・茨城新聞常務取締役は、「情報をいかにかみ砕いて適格に出すかがメディアの課題」としたほか、現場取材記者の安全確保についても、97年に起きた東海再処理施設火災・爆発事故の経験と合わせ言及した。これらを受け、原昭吾・原子力安全・保安院原子力広報課長は、同院が実施する広聴・広報の取組を紹介した上、本フォーラムでの意見交換を今後の施策に反映させていく考えを示した。

フォーラムに先立ち行われた住民参加のワークショップ「私たちの採点――原子力安全・安心は実感できるか」の討議内容について、土屋智子氏(HSEリスク・シーキューブ)他が報告したが、住民からの意見としては、情報公開・コミュニケーションの重要性他、防災体制の有効性検討など、12月に東海村で開催される政府主催原子力防災訓練に関連した要望もあった。

また、引き続いて行われた「原子力とともに 今後の東海村は」と題するパネルディスカッションには、村上達也・東海村長も登壇し、「村には、『原子力発祥の地』」と『JCO事故の地』との2つの座標軸ができた」とする一方、将来の村づくりに向け、新機軸を見出す必要性を強く訴えた。その上で、村上村長は、J―PARCなど、東海村の施設を活用した原子力エネルギー・放射線利用の推進を、原子力政策大綱に明確に位置付けることを求めた。さらに、「原子力界は大きな組織体、一方、地域社会は個人の集合体」と述べ、両者間に存在する「異質」を村と原子力の共存共栄の課題として掲げた。


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで