3か国の原子力規制当局が共同声明 EPR制御系に問題提起

英仏およびフィンランド3か国の原子力規制当局は2日、仏アレバ社製欧州加圧水型炉(EPR)の安全性について、設計上の問題を提起する共同声明を発表した。

3機関によると、最も問題なのは異常時に原子炉を制御する安全系と、通常運転時用・制御系の機能的および物理的な独立性。制御系に不具合が生じた際、機能の独立した安全系がカバーすれば、双方が共に機能しなくなるということはないが、初期設計では、両系統はかなりの度合いで複雑に相互接続している。

英国では現在、保健安全執行部(HSE)が新規原子炉建設計画における設計認可プロセスとして包括的設計評価を実施中。EPRはAP1000とともに審査対象になっている。また、仏国ではフラマンビル発電所、フィンランドではオルキルオト発電所(OL3)で1基ずつ、EPRの建設が進められている。

各国が個別にEPR設計を評価するなかで、英国のHSEと仏国の原子力安全局(ASN)およびフィンランドの放射線・原子力安全庁(STUK)は揃って、EPRの計装制御(I&C)系に安全性に関わる不適合があると指摘。同じEPRでも立地国の規制に合わせて設計に若干の差異が生じるものの、3機関の指摘は概ね共通しており、EPRで高度な安全性を確保するためにも共同で声明文を出すことになったとしている。

3機関はすでに、アレバ社に対して初期設計の改善を要請しており、同社も構造修正に同意した。同社によると、昨年12月にI&C系設計の追加情報を要求してきたSTUKに対しては、独シーメンス社と協力して対処。HSEから4月に指摘された構造上の疑問点については仏電力(EDF)との協力により、英国の要件を満たすよう設計修正したという。また、ASNが10月15日付けで要請した追加情報に関しては年末を目処に回答する旨、約束している。

原子力を輸出産業の主力に据える仏国にとってEPRは目玉商品とも言えるが、世界初のEPRとなるOL3は、当初計画から少なくとも3年、作業が遅延。超過建設費の負担がアレバ社とTVOの間で争いの元になっている。これに加え、、仏政府とは独立の立場にあるASNのクレームにより、仏国の原子力技術に対する心証が損なわれ、国外での原子炉建設入札競争にも影響が出るのではないかとの懸念も広がっている。


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