英政府、国家政策声明書案を公表 新規建設で10候補地

英国・エネルギー気候変動省(DECC)のE.ミリバンド大臣は9日、10か所の新規原子炉建設候補地リストを盛り込んだエネルギー・インフラに関する国家政策声明書(NPS)案を公表し、来年2月22日までの予定で公開諮問に付した。一般からの意見聴取に続いて議会の精査が完了すれば、政府は来年にも「エネルギーNPS」を正式に承認し、独立の機関として来年3月に新たに設置される基盤施設計画委員会(IPC)が、これに基づいて新規建設計画の申請を1年以内に審査・決定することになる。2018年以降の新規原子炉運開を目指した同国の原子力新設計画は、原子力白書に盛り込まれたスケジュールに従って着実に進展中だが、来年6月には議会の総選挙が予想されることから、産業界ではそれまでにNPSが正式承認されるのは難しいのではとの観測も広がっている。

NPSは国内の重要な基盤施設を開発する際、一般からの意見を十分聴取するとともに、複数機関による重複審査の無駄を省くなど、公正で迅速な判断を下すために定められた新制度の一部。施設の必要性や建設サイトの検討、影響の評価方法などが明記されている。今回DECCが公表したNPSは、原子力を含めて化石燃料や再生可能エネルギーなどの分野に関する6種類で、ミリバンド大臣は「低炭素エネルギー社会にシフトするため、大規模な発電容量を長期的に開発していく必要がある」と強調。このうち3分の1は2025年までの15年間に建設されねばならないとしている。NPSでは特に、再生可能エネルギーとクリーン石炭の利用枠組み拡大、そして新規原子炉建設に適切と評価された10サイトに基づいた新しい開発計画を明確な方向として据えている。

原子力に関するNPS案では、原子力の必要性を特に強調するとともに、新規原子炉からの放射性廃棄物は今後、効果的な管理処分が導入可能と明記。DECCはまた、新設計画の手続きの一部である「戦略的サイト選定評価(SSA)」により、今年4月までに原子力事業者が総計1600万kW分の原子力設備用として指名登録した建設候補地11か所のうち、サイズウェル、ブラッドウェル、ブレイストーンズ、ハートルプール、ヘイシャム、ヒンクリーポイント、カークサントン、オールドベリー、セラフィールド、およびウィルファを潜在的に適切と評価した。

これらのうちカンブリア州ブレイストーンズとカークサントンの2地点はまったくの新規立地地点だが、残りはすべて、稼働中原子炉およびかつて稼働していた原子炉の立地点。リストから外されたダンジネス原子力発電所サイトは、「潜在的な環境影響を緩和できると考えられない上、海岸侵食と洪水のリスクもある」と評価された。DECCはまた、居住環境指令に基づき予備の候補地を3か所、評価したものの、適性の面から最終的にリストから外したとしている。

DECCでは今後、並行して実施している包括的設計評価(GDA)でAP1000とEPRの審査を進めると共に、両設計についてEU指令で義務付けられている「新たな種類と形式の電離放射線利用」に関する正当性評価を実施する。


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