Fresh Power Persons (7)東京工業大学大学院理工学研究科 原子核工学専攻 木村 小督氏 地域との交流に感動し 原子力業界を希望

−大学院での研究内容は。

木村 細胞に放射線を当てると、照射された細胞だけでなく、その近傍にいる照射されなかった細胞まで何らかの影響を受けるというバイスタンダー効果について分子生物学的手法を用いて研究している。バイスタンダー効果が解明されれば、放射線生物学や放射線治療の分野に貢献できる。成果によっては放射線治療の方法も変わってくるかもしれない。

東邦大学時代は物理学科で、マイクロビーム装置の開発に携わっており、粒子線をいかに細くできるか研究していた。

−就職先は電力会社、しかも原子力発電に取り組んでいるところを希望しているとのこと。

木村 3月に原産協会の九州電力・玄海原子力発電所見学会に参加した。大学院入学時は放射線生物学を勉強したいだけだったが、授業で原子力のシステムや問題を学ぶ機会はあった。原子力発電所の見学に参加したのは、授業だけでなく実際に見てみたいという気持ちから。

見学会では、発電所の大きさを実感した。鑑賞用の花壇もあり、きれいな発電所だった。スケジュールの中で、九電の広報の方の話を聞く機会が多くあった。そして地域住民との交流の話を聞き、すっかり感動してしまった。これまでメディアを通しては地域住民の態度があまり見えていなかったが、この見学会で会った方全員が、我々の玄海の町を是非原子力のために使ってほしいという姿勢だった。九州電力社員の人たちは地域内で担当エリアが決まっていてそれぞれ担当エリアの家の郵便受けに顔写真入りの届け物をしたりするらしく、すごいと思った。ここで原子力広報に興味を持った。見学者の中には原子力推進に関わっている人たちも大勢いて、特に女性が多く活躍していることにびっくりした。自分もできるかもしれないと興味を持った。

−就職を控え、インターンシップに参加したそうだが。

木村 東京電力のインターンシップを体験した。6月頃インターンシップに行こうと決意し、検討する中でやはり電力会社に行こうと思った。放射線の専門分野を生かし、原子力広報の勉強ができる電力会社がいいと思った。特に「地元の方とのコミュニケーションを学ぶ」という項目があり、これだと思った。

東京電力のインターンシップの原子力部門には3人が参加し、福島第一原子力発電所で2週間過ごした。発電所の設備や原子炉のしくみ、安全管理や事故対応、企業倫理、社内で心がけていること、過去に不祥事を起こした後の信頼回復への取り組みなどを勉強した。最後の2日間は実際現場に入って、どんな仕事をしているのか学ぶ機会もあった。

原子力広報についても時間をさいて話していただいた。地域住民と一緒に取り組んでいることや信頼づくりのための活動などの話があった。原発のある町は田舎で人口も少ないので、地域のイベントに参加したり共に町をきれいにしたりする活動に積極的に関わりを持ったりすることが重要とのこと。信頼づくりに関しては社内での心がけも聞き、内側からも外側からも地域との絆を深めていく姿勢が見られた。地元の人たちはぎすぎすした感じがなく、本当に温かい。東京を離れてみるのもなかなかいいなと思った。発電所の中も仕事のしやすい環境だと思った。インターンシップを通して原子力関係の仕事に就きたいという気持ちが高まった。

−原子力報道に際し、理解を深めてもらうには何が必要と感じるか。

木村 立地地域の住民が理解するだけでは足りない。正直なところ、自分も放射線を使った研究をしていたが原子力という方向に全然目が向かなかったし、原子力発電所がどこにあるのかも全く知らなかった。自分たちが生活していくための電気がどこから送られてくるのかもっと知っておくべきだと思う。もう少し原子力発電所の立地地域のアピールをするべきではないか。立地地域の住民がいてこその電力供給だ。 (中村真紀子記者)

(このフレッシュ・パワー・パーソンズのシリーズはひとまず終了)


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