オランダNRG、ペッテン炉の後継として RI生産炉の建設準備開始

オランダの医療用放射性同位体(RI)製造業者である「原子力研究コンサルタント・グループ(NRG)」は19日、ペッテンにある高中性子束炉(HFR)の後継炉として検討していたパラス炉を建設するため、環境影響声明(EIA)報告書の開始前通知を住宅・国土計画・環境省(VROM)に提出した。

46年にわたり世界の医療用RI需要の3割を賄ってきたペッテン炉は昨年8月の故障後、今年2月に運転を再開したが、暫定的な運転認可の期限は来年3月に迫っている。需要の約4割を生産しているカナダのNRU炉は、後継のメイプル炉計画が中止になった上、5月の重水漏れ以降、修理作業が来年第1四半期までずれ込むなど、核医学検査に不可欠なテクネチウム製品の供給は依然として危うい状況。パラス炉が計画どおり2015年に完成するとしても、それまでの期間、日本のJMTR炉の利用も含め、穴埋め供給体制を緊急整備する必要性は変わらないと見られる。

今回の手続きは、ペッテン炉に続く新たなHFRの建設・操業認可を得るために必要な規制手続きの最初のステップ。熱出力45MWのタンク型原子炉で、RIの継続生産を念頭に置いた、操作の簡便な設備を備えた設計になる。医療用RI生産のほかに、核科学応用研究のための中性子照射、教育訓練用に活用される計画だ。

NRGは2004年から、デルフト工科大やECエネルギー研究所等の協力を得つつパラス炉の建設プロジェクトを開始。建設サイトには、既存のHFRが稼働するペッテン、およびオランダ唯一の原子炉であるボルセラ原子力発電所(PWR、51万kW)の隣接区域が候補に挙っている。

原子炉供給業者としては、(1)仏アレバ社とドイツおよびオランダの企業(2)アルゼンチンのINVAP社とスペイン、オランダの企業(3)韓国原研、韓国電力技術会社(KOPEC)、大宇、斗山とオランダ企業、の3つの企業連合が入札に参加。NRGでは2007年に設計仕様案を3連合に提示したのに続き、昨年6月に最終仕様を通達した。

昨年中は3連合の関連施設視察も含めて交渉を重ねており、供給業者および概念設計の最終的な選定は今年中に完了予定。2010年以降は詳細設計段階に移る。その後は12年中の認可手続きを経て、13年以降に建設を開始。15年頃に起動し、16年からは本格的に運転を始めたい考えだ。投資コストは約3億ユーロ、完成後の年間運転コストは3000万ユーロと見積もっている。


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