原子力機構 核融合用マイクロ波で 世界最高出力に成功

日本原子力研究開発機構はこのほど、核融合プラズマ加熱用マイクロ波発生装置「ジャイロトロン」(=写真)で、世界最高の1500kW出力を4秒間維持することに成功、ITER加熱装置の高性能化に向け、大きく前進した。

ジャイロトロンは、電子ビームのエネルギーを100GHz(電子レンジの約40倍の周波数)のマイクロ波に変換し、1000kWクラスのパワーで出力できる大型真空管で、核融合反応に最適な温度にプラズマが加熱される。電子ビームのエネルギーを大きくすればマイクロ波出力を上げられるが、無駄な温度上昇となるエネルギーも増えるため、この熱負荷を低減する「高効率動作」へ移行するまでの時間短縮が技術開発課題となっていた。

しかし、従来の超伝導コイルで磁場強度を変化させる方法では、移行までに数十秒を要するため、磁場強度と同様に電子ビームの軌道に作用し、かつ高速に制御可能な電場強度に着目して開発を進め、0.1秒程度で高効率動作へ移行できる新運転方式の実現に至った。これは、ジャイロトロンの陰極・陽極の他、引き出し電極を持つ「三極型電子銃」の特性を活かし可能となった。

今回の成果は、ITERや、改修・建設が進みつつある核融合実験装置「JT―60SA」にも適用可能なほか、ロケット推進方式など、様々な波及効果も期待できる。


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