国際原子力機関(IAEA) 供給保証とイランで決議

国際原子力機関(IAEA)は11月27日の定例理事会で2つの決議案――(1)ロシアの低濃縮ウラン(LEU)備蓄をIAEAの仲介により加盟国に供給する構想(2)イランに第2ウラン濃縮工場の建設停止と保障措置協定における義務など、国連安保理決議の遵守を要求−−を賛成多数で採択した。

イランの民生用原子炉に対する燃料供給を確約するとともに、同国に国連安保理決議違反を警告し、核兵器開発疑惑が拭い去れない工場建設の即時停止を要求したもので、原子力開発の権利を標榜する同国は濃縮施設をさらに10か所、新設する計画を公表するなど強硬姿勢を強めている。

それだけの施設を新設すれば、現時点で医療用RI生産炉とブシェール発電所しか存在しない民生用原子炉のための燃料供給という弁明は成り立たず、イランのブラフと見る向きもあるが、これまで同国と友好関係を維持していたロシア、中国が決議に賛成し、イラン国会も核不拡散条約(NPT)からの脱退やIAEAの査察阻止を示唆。同国が急速に孤立化していく一方、米英の政府高官が制裁を公言し始めるなど緊張が高まっている。

折りしも、IAEAの決議採択は同理事会の年内審議・最終日で、3期12年事務局長職を務めたM.エルバラダイ氏にとっても最後の公務。事態は最も難しい局面で、12月1日付けで新事務局長に就任した天野之弥氏の手腕に解決がゆだねられることになった。

理事会では審議の冒頭でエルバラダイ事務局長が、9月にイランから第2濃縮工場の存在を連絡されて以降の経過を説明。IAEAの査察により、同工場は約3000台の遠心分離機を16のカスケードに設置する設計であり、2011年の操業開始が計画されていることが判明した。同事務局長はRI生産炉用として、イランの在庫LEUをロシアに移送して約20%まで濃縮、仏国で燃料集合体に加工する案と、生産炉に燃料が補給されるまでの間、同LEUをトルコなどの第三国に留め置くとの代替案を提示。しかし、理事会開催の時点でイランがどちらの案にも同意しなかったことを残念に思うとの見解を表明していた。

ロシアのLEU備蓄構想に関する決議では、事務局長が07年に理事会に提示した核燃料供給保証の選択肢に関する報告書など関連文書に言及。その趣旨をIAEA憲章と照らし合わせ、事務局長がロシアと備蓄センター設立のための協定を結び、供給を希望する加盟国とも必要な協定を締結することを承認した。

イランにおけるNPT保障措置協定と国連安保理決議の履行に関する決議では、NPT加盟国が平和利用目的で原子力を研究開発利用する権利を再確認。その上で、イランが国連安保理決議とIAEA理事会に対する義務を無視し続けている点、また、イランの原子力計画から軍事的特質の可能性を排除できず、保障措置協定上の義務に違反し9月まで申告せずに第2濃縮工場を建設していたことなど、安保理決議に反している事実に深刻な懸念を表明している。


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