日台安全セミナー 台湾の原子力発電 計画外 停止削減で高稼働率

原産協会の第24回日台原子力安全セミナーのために名古屋を訪れていた台湾電力公司の黄憲章・副総経理は11月17日、同国の原子力発電の現状と将来展望について講演し、当面は出力向上や運転期間の延長によって既存炉を最大限に活用していくとの方針を明らかにした。

黄副総経理によると、台湾では2007年のCO排出量が世界で第22位だったことから、台湾では2017年までにエネルギー利用効率を2%向上、25年までに低炭素電源シェアを40%から55%に拡大−−などにより25年の排出量を2000年レベルに抑える方針。原子力に関しては、過去4〜5年の平均設備利用率が約90%と良好である一方、02年に長期的な脱原子力発電政策を取ったことから、新規の建設計画は停滞している。このため、しばらくの間は既存原子炉を@出力向上A運転期間の延長−−により最大限に活用するとしている。

@の具体的な方法としては、熱出力の測定をより高精度に行って1.7%程度の出力向上を図る「MUR」、既設設備の余裕の範囲内で7%まで出力を向上させる「SPU」、および、積極的に経済性を追求し20%の出力向上を目指す「EPU」を導入。MURについては今年9月に既存の6基すべてに導入が完了し、設備容量が56MW、発電量で1%増加した。

Aについては、金山1、2号機の運転期間を20年延長するための評価を今年7月に原子力委員会に提出。既存の6基で期間延長して40年間操業すれば、総計78万GWhの電力量増加と2500万トンのCO排出削減が可能だとしている。

将来的に原子力発電を拡大していく点については、新規サイトよりも既存の4サイトへの増設が基本方針だと黄氏は説明。具体的には、第二(国聖)、第四(龍門)原子力発電所への増設を優先し、第3世代の原子炉を最短で2023年に運開させることを目指していると述べた。

同電力の姚俊全・核技所所長は、龍門原子力発電所の建設および試運転準備の状況について紹介。今年9月末現在の進捗率は91.05%で、機器の据付・配管などはほぼ完了したという。

現在は計装制御(I&C)系作業のピークで、今年末までの終了を目指して使用前試験を実施中。スケジュールとしては、1号機の燃料装荷が来年12月、運転開始は11年12月に予定されている。また、同2号機は11年12月に燃料を装荷し、翌12年12月に運転を開始する。

台湾の原子炉で達成されている高稼働率(=表)と運転保守管理に関しては、李文華・核発所副所長が説明した。

稼働率の向上には、@計画外停止の減少A燃料交換停止期間の短縮化B運転管理の改善CMURによる出力向上D機器設備の更新−−が寄与。@のためには、予防保全計画の強化実施やタービン・ローターその他の機器の取替えが重要で、保守作業員の訓練の継続実施やINPO、WANOなどといった機関から得られる知見の反映も重要だ。Aについては、停止前の十分な計画策定と準備、過去や外部の事例を参考にすること、機器・ツールの改善が有効だと強調。国聖2号機が達成した29.45日は同電力でも最短記録であることを紹介した。


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