韓国がUAEの原子炉建設計画で 4基の建設と運転を受注

アラブ首長国連邦(UAE)の首長国原子力エネルギー会社(ENEC)は12月27日、同国初の民生用原子力発電所を設計、建設、操業する業者として韓国電力公社(KEPCO)が率いる韓国企業連合を選択した。入札には仏国および日米の企業連合も参加し、それぞれの政府が政治的に働きかけるなど熾烈な競争となったが、官民の総力を傾注した韓国チームが初めて商用発電炉の輸出に成功した。

総計400億ドルに及ぶ契約のうち、韓国チームは約200億ドルで140万kW級の原子炉4基を設計・建設するとともに、初装荷燃料によってこれらを起動させる。また、残りの200億ドルで60年にわたって原子炉の運転支援、機器の取替え、および共同検査を請け負うとしている。最初の1基は2017年に電力送電網への接続を予定しており、残りの3基も20年までに完成。これによりUAE内の電力需要の25%を賄う計画だ。

建設サイトについては、アブダビを本拠地とするENECがアラビア湾地域など10候補地の評価作業の最終段階に来ており、地震学や地層学、環境影響その他のファクターを科学的に詳細に調査中となっている。

契約ではまた、韓国チームをこの計画の出資者とする基本項目について両者が合意。これにより両者は事業パートナーとしての連携を強化し、UAEの原子力開発利用計画に基づき原子力発電所を期限以内に所定の予算で安全かつ高い信頼性をもって操業するのに要する技術や経験、知見等を保証する。韓国が過去30年間に発展させてきた原子力産業をUAEのモデルとし、今回の開発計画におけるリスク軽減を図ることになる。韓国はさらに、UAEが原子力開発利用計画や原子力産業のインフラ整備、商業産業として繁栄する基盤の確立に必要な人材を確保できるよう、広範囲な人材育成・訓練、教育プログラムを支援していく。

今回の入札では韓国のほかに仏アレバ社のグループ、米国のジェネラル・エレクトリック(GE)社と日本の日立の連合が参加したが、韓国チームの提示価格は仏国の2割減だったことなど、価格競争力と工期の短さが決め手になったと韓国政府は説明。一部の分析家も、中東地域における韓国の政治的影響力が皆無な点から見て、純粋に価格と同国での原子炉の安全実績に基づいて選定されたと見ている。

が、これに加えて、韓国チームが提案した原子炉設計の基幹部分はウェスチングハウス(WH)社の技術がベースであるため安全性能が保証されている点、契約獲得戦略の中で現代建設のCEOを務めた経験のある李明博大統領自らがUAE側と電話で直接協議し、軍事交流協定の締結も含めて原子力以外の分野でも長期的な保証を確約するパートナー関係を構築するなど、様々な外交努力を講じた点が大きい。

この契約を巡っては仏国も、サルコジ大統領が率先してトップ・セールスを展開したと伝えられており、国際的な原子力ビジネスにおいて民間企業の努力のみならず、思い切った官民外交の展開など国の果たす役割がますます重要度を増してくると思われる。

韓国チームはKEPCOのほかにサムスン物産、現代建設、斗山重工業で構成されるが、下請け業者として次のような企業が加わっている。すなわち、エンジニアリング・資材調達・建設(EPC)契約、および原子炉の運転で主要な役割を担う韓国水力原子力発電会社(KHNP)、設計とエンジニアリング・サービスを提供する韓国電力技術会社(KOPEC)、燃料供給の専門企業である韓電原子力燃料会社(KNF)、原子炉の保守点検を担当する韓電機工社(KPS)、そして、基幹技術部分を供与するウェスチングハウス(WH)社である。

なお、UAEでは今回の4基に続く原子炉についても順次開発していく計画。長期的な燃料供給や共同投資、人材の教育訓練などの初回契約のスコープ以外の分野で、ENECは韓国以外の入札者とも、今後の潜在的な協力について協議を続けていくとの考えを表明している。

採用された原子炉設計は、第3世代で140万kW級の改良型加圧水型炉(APR)1400。KEPCOの指揮の下、韓国原子力産業が1992年以降、約10年間かけて開発したもので、02年に韓国の規制当局から標準型炉の認証を取得したが、元々は、WH社が米原子力規制委員会から設計認証を受けた「システム80+」に改良を加えた設計。TMI事故後の規制要項を満たすとともに、過酷事故時でも原子炉の停止と残留熱の除去、格納施設の健全性、および放射性物質の放出防止等が確保されるとしている。

すでに韓国では、APR1400の初号機として新古里3、4号機を建設中のほか、新蔚珍1、2号機を計画中。UAE初の原子炉はこれらをモデルとする世界で5基目のAPRとなるが、KEPCOではUAEの気象条件や規制当局であるFANRの要求項目に合わせて補足設計を加えて建設する計画だ。


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