リトアニア 最後の1基を閉鎖 代替炉計画は投資者の募集段階

リトアニアは昨年12月31日付けで、同国に唯一残されていた原子炉であるイグナリナ原子力発電所2号機(136万kW、RBMK)を完全閉鎖した。2004年に欧州連合(EU)に加盟する際、課された条件を忠実に守った形だが、代替原子炉の建設計画はその3週間前、ようやく投資者募集の入札を開示した段階。順調に進んだとしても2018年までは、ロシアなど周辺国からのエネルギー輸入依存が大幅に高まるのは避けられない情勢だ。

イグナリナ発電所はロシア国外で稼働するRBMKとしては最後のもの。1986年に大事故を起こしたチェルノブイリ発電所とほぼ同型であることから、早期に閉鎖させることがEUとの約束になっていた。1号機が04年12月31日に閉鎖された後、2号機はリトアニアの総電力需要の約7割および輸出用電力を賄う重要な電源として稼働。同発電所の古参スタッフは「閉鎖は完全に政治的な判断だった。改修すればさらに20年は稼働できた」として失望感を露わにする一方、同国のA.クビリアス首相は「閉鎖後直ちに電力供給危機が起こるわけではない。我々は全うな欧州人として、予定通りに義務を遂行した」と言明。A.セクモカス・エネルギー大臣も、喫緊の手当てとして火力発電、ラトビアとエストニアからの電力輸入に加えて、ウクライナ、ベラルーシ、およびロシアからも輸入を計画しているほか、ロシアからはさらに、天然ガスの輸入量増加も必要になるとしている。

リトアニア政府は昨年12月8日、イグナリナ発電所敷地内(ビサギナス市の東6キロメートル)の2つの候補区画で建設を計画しているビサギナス原子力発電所プロジェクトへの投資者を募集するため、設計・建設・運転・および閉鎖に関する諸条件を記載した入札を開示。同計画を共同で進めるのに必要な原子炉の運転および発電能力の向上に関する経験と専門知識を豊富に有する戦略投資家を募集するとし、地域パートナーとなる予定のラトビアやエストニア、ポーランドの企業とともに、新発電所の運営企業の株式を合わせて100%まで保有を認めるとしている。

具体的には仏電力(EDF)や独E・ON社、伊電力公社、バッテンフォール社、イベルドローラ社など欧州の大手エネルギー企業を念頭に置いており、同国のビサギナス発電会社(VAE)が今月29日まで応募を受け付ける予定。最初の3か月間で応募者による拘束力のない提案と適格性を審査した後、続く3か月間に拘束力のある提案の審査と上位2社との交渉を実施する計画だ。

予算としては1基あたり30億〜50億ユーロで、2〜3基の原子炉設置を検討中。今年の秋にはパートナー候補のラトビア、エストニア、ポーランドおよび戦略投資家との交渉および契約締結を済ませ、2年間かけて設計、6年ほどで建設し、2018年〜20年ごろの運開を目指している。


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