特殊金属加工の金属技研が JT−60SAダイバータ36基を受注

金属加工のトップメーカーである金属技研(本社・東京都中野区、長谷川数彦社長)は、今後、建造が本格化する先進的な超電導トカマク装置(JT−60SA)の主要機器の1つであるダイバータを受注した。36ユニットの下側ダイバータ・カセットを製作する。受注額は約10億円。

JT−60SAは6極間協力で進められている国際熱核融合実験炉(ITER)計画と並行して、日本と欧州が共同で実施する幅広いアプローチ(BA)活動の中で、日本原子力研究開発機構の現在のJT−60を超電導化し、ITERの技術目標達成のために支援研究することを目的としている。

政府が11月に行った来年度予算事業仕分けでも、JT−60SAへの改造は「サテライトトカマク計画」の一環として、「予算要求どおり」との評決がだされており、計画では2015年度に完成する予定。

ダイバータはプラズマからの不純物流出粒子などを排出するための装置。JT−60SAでは高温耐熱特性、耐中性子特性、大強度電磁力耐力といった性能が求められる。従ってカーボン・ファイバー・コンポジット(CFC)や高強度銅合金などのろう付けや熱間等方圧加圧法(HIP)、拡散接合といった高い製法技術が必要となる。

HIP(ホット・アイソスタティック・プレス)はガス中で部材を高温にし、圧力をかけることによって異種素材の接合などに適した技術で、溶接やろう付けが困難な材料などの接合に適する。

金属技研が今回受注したのは、会社設立以来、研鑽してきた高度な金属加工技術が評価されたもの。当初から金属材料を中心に熱処理、ろう付け接合、HIP処理等を行う専門業者を目指し、業界に先駆けて国内最大級の真空熱処理炉、真空ホットプレス、HIP装置を導入し、高精度な処理が求められる航空機や発電用タービン、半導体製造装置や同材料等の加工処理を行ってきた。特にHIP装置は多額な維持費がかかる上、不定期な単品受注が多いことから、国内では同社へ大部分の依頼がくるという。

原子力関係では、軽水炉燃料集合体のスプリング、BWRのシュラウド、核融合部材、J−PARC関連部品などを製造している。

同社では、16台目となる世界最大のHIP装置(ワークサイズ直径205cm×高さ420cm、最大処理重量25トン)を同社姫路工場で1月に稼働させる。今後とも世界的に需要が期待される大型部材加工のニーズに応えるとともに、「原子力発電プラントや核融合・加速器部材の販路拡大も目指したい。特に中国市場に注目している」と期待している。


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