原産協会 茨城県大洗町に聞く 原子力教育の最前線

日本原子力産業協会は放射線利用などの普及を図るため、「量子放射線利用普及連絡協議会」を定例的に開催しているが、このほど都内で第10回会合を開催し、「大洗町の原子力・エネルギー教育への取り組み」について茨城県の大洗町立磯浜小学校校長の森保氏、同町立夏海小学校教諭の田山淳子氏、同町教育委員会教育次長兼学校教育課長の藤本弘幸氏を講師として招き、講演を聞いた。

同町には日本原子力研究開発機構・大洗研究開発センターがあり、高速増殖実験炉「常陽」、高温工学試験研究炉(HTTR)、改造中の材料試験炉(JMTR)などが存在し、日本の原子力研究開発拠点の1つとなっている。

大洗町では、「小さくてもキラリと光る町」をキャッチフレーズとして、さまざまな特色ある取り組みを行っている。その一環として、「子どもたちの科学する心」を育てるために、大洗町原子力教育推進研究委員会を04年に設置し、学校教育を通して原子力・エネルギーの活用や防災に関する理解を深めるために、地域型の原子力教育推進計画を作成し、実践研究を行っている。

具体的な活動としては、(1)大洗町の原子力事業所との連携により、原子力施設の見学(2)大洗わくわく科学館での理科授業(3)茨城県から全校児童に配布されている「原子力ブック」を大洗町の原子力教育計画で単元に位置づけ活用することにより、理科・社会の授業で適宜原子力・エネルギーの教育(4)原子力に関する学習教材の開発(サイエンス・ネット)(5)転入教職員に対しての研修((1)原子力の基礎知識、(2)大洗町の原子力防災、(3)防災・原子炉施設の見学、(4)放射線の測定)――などを行っている。

これらの活動により、児童らが楽しそうに実験する様子の写真と共に、児童らの実験や出前事業での感想が紹介され、教育を受けた児童たちは、実験の楽しさを身をもって体験し、エネルギーや電気の大切さを小さいときから学んでいる姿を浮き彫りにした。

大洗町では、原子力との共存共栄を目指し、大洗町民憲章で、「わたくしたちは この海をひらき 原子の火を育て 水と緑を愛する 健康で明るい大洗の町民です」と謳っている。今後も文部科学省、茨城県の支援を受けながら、原子力・エネルギーの教育の推進に努め、このような地元に根付いた取り組みが、大洗町から全国各地へ水平展開されることが望まれている。


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