米国一般教書演説 原発新設も前面に クリーンエネルギー法案の要 地球温暖化防止に本腰

米国のB.オバマ大統領は1月27日、初の一般教書演説で「安全でクリーンな新世代の原子力発電所の建設を通じたクリーン・エネルギー雇用の創出促進」を強調するとともに、議会上院で難航している包括的気候変動対策(クリーン・エネルギー)法案審議可決に向けた超党派の努力を支援したいと明言した。先月の上院補欠選挙や昨年の2つの州知事選で共和党候補が当選するという逆風の中、オバマ政権の目玉政策の1つである同法案を成立させるため、原子力をその他の低炭素エネルギーと同等に扱う姿勢を明確に打ち出し、共和党の支持を求めているとの見方が有力だ。(3面に関連記事)

クリーン・エネルギー法案は、再生可能エネルギーを中心とするクリーン・エネルギーの開発促進やエネルギー効率化の推進により、地球温暖化防止と関連産業における大規模な雇用創出を目指したもの。CO等の具体的な削減手段として、エネルギー産業等に対する排出量の上限設定を含む排出量取引制度の導入や、再生可能エネルギーによる供給割合を2020年までに2割まで向上、などが盛り込まれている。原子力はこの中では概して肯定的な位置づけ。原子炉建設のための直接融資、信用状供与、融資保証といった金融支援が提案されていることから、原子力エネルギー協会(NEI)では同法案に賛成している。

下院では昨年6月に同法案が通過。その後、上院版・法案の審議が開始されたが、医療保険制度改革法案が優先審議されていることもあり、昨年12月のCOP15で温暖化防止問題に対する米国の決意を示すことはできなかった。また、共和党議員の多くは排出権購入コストや省エネ技術導入によるエネルギー企業の負担増への懸念から同法案には反対の立場。民主党議員の中にも石炭産業など選出州内の産業擁護のために反対意見の議員が存在し、審議は難航している。

上院では同法案を管轄する6つの委員会での審議が必要で、担当の環境・公共事業委員会ではすでに昨年11月に可決。その他の委員会が修正審議中だが、昨年6月にエネルギー・天然資源委員会が原子力推進策を盛り込んで可決した関連法案とのパッケージ法案で成立を目指す動きもある。

発足当時7割近かったオバマ政権の支持率は、ここ数か月で5割前後に低迷しており、1月にマサチューセッツ州で行われた上院補欠選挙では、伝統的に民主党が占めていた議席を共和党が奪取。発足1年目の信任投票での敗北はオバマ政権にとって大きな打撃であり、今後の法案審議の中で共和党の議事妨害を抑えるために必要な60議席を確保できなかった。また11月には、下院の全議席および上院議席の3分の1を改選する中間選挙が控えていることから、同法案の可決・成立には、反対議員との調整や妥協案の盛り込みなどの課題を早急にクリアする必要があると見られている。


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