カザフの原子力関係者が来日 原子力分野で協力拡大へ

ロシアおよび旧ソ連諸国との交流促進団体である(社)ロシアNIS貿易会の招きにより、カザフスタンの原子力関係代表団が1月30日〜2月5日まで来日した。

この招聘は日本の経済産業省が平成20年度から開始した原子力関連産業人材育成事業の一環で行われたもの。同事業では、世界有数のウラン埋蔵地域である中央アジア各国との関係を発展させ、信頼を醸成し、わが国のエネルギーの安定供給を確実なものにすることを主な目的としている。今年度は昨年度に引き続き、カザフスタンを対象に日本からの専門家派遣や、同国の原子力関係者の日本招聘を実施中。

今回来日した代表団は合計9名で、エネルギー・鉱物資源省(MEMR)のK.タケレコフ原子力エネルギー・原子力産業局原子力産業部長を団長に、同省および安全保障会議書記局、司法省、環境保護省、産業貿易省、経済予算計画省のメンバーで構成。日本滞在中の7日間、経済産業省や原子力関係機関を訪問し、日本の原子力発電開発等に関する説明を受け、また施設を視察した。

2月2日には東京都内の原産協会を訪問。同協会は、日本の原子力産業の黎明期に産官学が果たした役割や努力などを紹介した。これに対してカザフスタン側からは、日本の地域電力会社の役割と担当区域、原子力発電プラント施設計画での国の役割、初期の海外原子力留学制度、日本の原子力損害賠償制度、高レベル廃棄物の最終処分の技術と資金、電源別発電コストの比較、MOX燃料の加工者、再生エネルギーの役割、廃炉費用や高レベル廃棄物最終処分費の電気料金への計上の仕方等について質問があった。

2月4日には「カザフスタン原子力情報交流セミナー」が開催され、カザフ側から、@「カザフの原子力部門について」(タケレコフ部長)A「カザフの原子力利用分野における国家規制」(G.エリグバエバ MEMR原子力委員会核物質防護・管理局主任専門官)B「カザフの分野別産業政策―機械製造業」(I.ヌクシェフ産業貿易省産業委員会機械製造部専門官)C「カザフにおける環境影響評価の実施について」(A.アビシェバ環境保護省環境規制・監督委員会環境監査部主任専門官)――の4編の発表があった。

〈原子力開発状況〉

これらの発表の中で、現在のカザフでは、発電電力量の95%が石炭火力と水力によることを説明。また、ウランの確認埋蔵量が100万トンと世界の5分の1を占め、世界でも第2位であることを指摘した。原子炉は現在、国立原子力センターに研究炉が4基あり、市民や社会団体は、原子力事故の被害を受けた時は、事故発生者に被害の補償を要求できることも紹介した。

1999年に原子力委員会がMEMRの中の独立機関として設置され、西カザフスタン州のアクタウ市で原子力発電導入の事業化調査を実施。すでに報告書が出されており、経済予算計画省で審査中である。容量規模としては60万kWを考えており、国の審査を通れば、さらに詳細な内容の検討に進む予定だ。

原子力発電プラントの設置申請が出れば、カザフの現行法令に則って、供用の全期間を対象として審査し、設置許可証を発給。建設や運転また廃炉に関する許可は、その都度事業者が国に申請し、国はそれぞれの段階に対する設置許可証の附属書類として発給する。

〈日本との協力〉

日本との関係では、原子力協力協定締結に関連して新たに5つの国際条約に加入することが必要になった。このうち4つについては、加盟申請を本年1月15日に議会の上院に提出。すでに承認されており、大統領の署名が得られれば、加盟が決まるとしている。

人材育成に関しては、タケレコフ部長が「国立原子力センターでは原子力の研究開発以外に、原子力発電プラント運転員の訓練施設もある。日本との協力枠組みでも運転員の養成が含まれており、ニーズに対応しているので今後も続けたい。日本以外の国々との一般産業での協力は関係省庁でいろいろとあるが、原子力産業ではまだない」と説明。日本の協力に対する期待を示した。

また、日本と展開中のビジネスについては、ウラン鉱山の共同開発、原位置抽出(ISL)法に使用する硫酸の製造プラント建設、レア・アースの3件を重要案件に挙げることができると指摘した。


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