【Salon】東京大学大学院教授 山地 憲治氏 「人を残す」が到達点

エネルギーシステム工学分野の第一人者、東大院工学系研究科教授の山地憲治氏(60歳、写真右側)が3月末退職を前に2月19日、最終講義「エネルギー政策研究の軌跡と到達点」を開いた。山地氏のエネルギー政策研究者としての「軌跡」は、東大工学部原子力工学科卒、大学院博士課程修了後、電力中央研究所に入所し、17年間籍を置いた。

この間、エネルギー・環境問題に関する数理モデルを現実の意思決定にどう役立てるか、工学と経済学の境界に立つ新分野だけに常に手探り状態だった。特に旧ソ連チェルノブイリ事故後の原子力への逆風が吹き荒れる中、原子力発電を含む「世界エネルギーモデル」の策定は、山地氏にしかできなかった最大の功績の1つと言われる。

次いで94年に東大教授に就任後、原子力との関係が一段と深まり、96年から始まった原子力政策円卓会議や、原子力長期計画策定会議に参画、05年の原子力政策大綱策定に協力した。

さて、山地氏の研究活動の「到達点」は何か。原子力問題は単なる科学技術の問題ではなく社会との関わりについて深い考察が不可欠となる中、電中研では電力会社という社会的意思決定機関との関与を通じて、その草分けとして不動の研究実績を積んできた。そして「理想的研究」と「教育」が車の両輪である大学教授として16年間を経て、「『三流の人間は金を残し、二流は仕事を残し、一流は人を残す』と言われるが、私も多少なりとも人を残すことに貢献できたかなと思う」と締めくくる。

山地研究室の教え子たちが今、各方面で新進気鋭の研究者・頭脳として芽吹き・手を携え、グリーンイノベーションのニューリーダーとして台頭しつつある。

山地氏自身はこの後、エネルギーシステム工学のグローバルな舞台で国際貢献する道を選択することになりそうだ。(英)


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