原子力部会 利用率向上で集中審議 日米間の比較示し要因分析も 「相当の新増設も必要」

経済産業省は5日、民主党を中心とする三党連立政権誕生後初の総合資源エネルギー調査会・原子力部会(部会長=田中知・東大院教授)を開き、「原子力発電の推進に関する最近の動向と当面の課題」として、諸外国に比べて低い我が国の「設備利用率の向上」と、新増設・リプレースの推進など「中長期的な設備容量のあり方」を中心に審議した。

冒頭、増子輝彦副大臣が挨拶に立ち、地球温暖化対策基本法案について、12日の閣議決定を目途に現在最終調整中であることを明らかにしたうえで、「基本法の中で原子力の扱いは極めて重要だ」と指摘した。また、4日の参院予算委で鳩山由紀夫首相が、経済産業省からの原子力安全・保安院の分離論について触れたことについて、「これから真剣に協議していく」と述べた。また、原子力輸出の海外展開については、「オールジャパンでの取り組みを進めていきたい」と強調した。

エネ庁からは、現在の「電力供給計画」に記載されている15基に、2020年までに9基約1200万kW、30年までにさらに6基約800万kWを加えて日本の原子力発電所は合計約6800万kWに達すると説明。一方、この合計出力レベルを将来とも維持しようとした場合、原子力発電所が60年間で廃止措置に移行すると仮定すれば、今後さらに、50年までに150万kW級が約20基必要になってくると指摘、「今後も相当規模のさらなる新増設が必要になってくる」と強調した。

続いて、電気事業連合会は、原子力発電を、安定供給確保」「環境保全」「経済性」の3Eの同時達成の切り札として、安全を大前提にした柔軟な運転サイクルを設定するなど、設備利用率の向上に取組んでいくとした。

また、原子力技術協会は、日米の稼働率比較を行い、(1)運転期間は、日本約13か月、米国約19か月(2)運転中停止回数は日本約0.54で、米国の約1.2より少ない(3)しかし1回当たりの停止日数は、日本では米国の7倍程度(4)定検期間は日本は米国の4倍程度――で、結果、日本の利用率は平均約70%で米国の約92%を大きく下回っていると指摘。

その上で、「設備利用率向上への取組みに向けた提言」として、事業者には(1)自主保安活動の推進(2)点検対象機器の適正化(3)本格的な運転中保全を導入し点検実施時期を最適化――などを、規制側には「事業者の改善モチベーションを高める科学的・合理的かつ国際標準となり得る規制制度の運用」を求めた。

次回は3月29日、「国際的課題への対応」について審議し、5月には取りまとめの方針だ。


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