仏国、新規導入国支援・国際会議で提言 「金融機関の支援必要」

仏国政府は8日と9日の2日間、経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)との協賛で「原子力民生利用へのアクセスに関する国際会議」をパリで開催した。冒頭、OECDのA.グリア事務総長の挨拶に続いて、仏国のN.サルコジ大統領が24分間にわたって熱意に溢れたスピーチを披露。「進歩と安全保障、貧困からの脱却と環境保護はトレードオフの関係ではなくすべて同時に満たす道がある」と指摘し、貧しい国々でも等しく原子力の導入が可能になるよう、国際金融機関による財政支援の必要性を強調した。また、原子炉設計の安全性を得点付けする中立の立場の国際機関や、高水準の技術者を養成する国際核エネルギー機関を創設すべきだと訴えた。

世界約60か国の代表を集めたこの会議は、原子力の新規導入でネックとなるいくつかの課題に焦点を当て、世界的な利用拡大のために国際的な協力強化を促すのが主な狙い。仏国には拡大基調にある国際原子力市場で一層有利な立場を固めたいとの意図もあり、サルコジ大統領自らが陣頭指揮を取って関係各国に参加を呼びかけていた。

大統領はまず、2030年までに世界のエネルギー需要は40%の増加が見込まれるとし、地球温暖化に対処するためにも原子力が必要と指摘したが、仏国は原子力と同時に再生可能エネルギーも必要と考えている点を強調。また、この時期までに増加する電力需要の80%が非OECD諸国からのものであり、使用量を抑えるなど経済成長なしで需要増に対処することは難しいと指摘した。

同大統領はさらに、「貧しい国には原子力を安全に利用することができず、その権利もない」とする考え方は傲慢この上ないと断言。原子力を持つ国と持たざる国とを差別化すべきでなく、原子力は今後、両者が新たに国際連携していくための「接着剤」になり得るとの見解を表明した。

こうした考えを背景に、同大統領は原子力ルネサンスに必要な要素として、資金調達や原子力計画を進める上での国民との密接な関わり、国際協力による教育訓練制度の拡充、核不拡散体制の遵守、集団的な安全確保、燃料の供給保証、廃棄物管理−−などを列挙。世界銀行などの国際金融機関が原子力建設プロジェクトを融資対象としていないのは受入れがたいとしたほか、京都議定書のCDMにも原子力を加えるよう訴えた。

また、IAEAの傘下に原子炉設計の安全性を得点付けする独立の機関や国際燃料バンクを設立するよう提案。核燃料の濃縮や再処理についても「新規導入国に利用への道を閉ざすのは愚かなことだ」と指摘しており、ウランの有効利用と最終処分する廃棄物量の低減に最良の方法としてその活用促進を勧告している。

同会議ではこのほか、国際原子力機関(IAEA)の天野事務局長や欧州委員会のJ.バローゾ委員長らが全体セッションで演説。資金調達問題や国際協力に不可欠な法的枠組みの整備、責任ある核燃料の管理方法、人材育成システムなどの課題については、原子力先進国と新規導入検討国のエネルギー関係閣僚、および産業界の幹部らが個別のセッションで話し合った。日本からは経済産業省の松下忠洋副大臣が参加した。


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