IAEAがアブダビで人材国際会議 日本の人材育成例を紹介

国際原子力機関(IAEA)は14日夕刻のレセプションから18日までの日程で、「原子力発電計画の導入と拡大のための人材開発国際会議」をアラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビで開催した。

原子力の新規導入を望む国々が必要とする専門の人材育成という課題について、各国の政府や産業界の取組み事例を提示し合い、実用的な経験と教訓を共有するのが主な狙い。原子力の導入意志表明後、わずか3年で初の原子炉建設計画発注先を韓国に決定したUAEがホスト国となり、原子力先進国と新規導入国を含めた合計74か国、および8つの国際/教育連携機関から総勢320名以上が参加した。

会議の冒頭、ビデオ出演したIAEAの天野事務局長は、2030年までに新たに10〜25か国が最初の原子炉設置を果たすと予測。これらの国々で優秀な技術者が必要となることはもちろん、原子力先進国でもこれまで原子力産業界を牽引してきた技術者達が引退時期を迎えるほか、後継者の育成システムが必ずしも十分でないと問題点を指摘した。

その上で、「原子力教育の仕組みは国ごとに異なるものの、原子力技術の供給国は自国の人的資源を確保しつつ、導入国へは技術とともに教育・訓練の枠組みも提供可能でなくてはならない」と言明。導入国の側でも供給国に頼りきるのではなく、自前の専門家養成・技術ベースの開発能力を持つ必要があると強調した。

またIAEAとしても、研究炉や訓練施設など教育インフラの共同利用に便宜を尽くしたいとし、そのためのアイデア提供を参加者に呼びかけた。

2つのパネル討論では、それぞれ「協力機関の役割」と「政府の役割」に焦点を当てて議論。欧州原子力ネットワーク(ENEN)や米原子力協会(NEI)、および経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)などの代表とともに、日本からは原産協会の服部拓也理事長がパネリストとして登壇した。

同理事長は、日本が40年にわたる原子力開発の経験をもとに新規導入国の人材育成に貢献するため、これまで産官学が個別で実施してきた活動を統合しつつあることを紹介。その結実として「日本原子力人材育成ネットワーク(JNHRDN)」がこの夏にも始動する計画であることを明らかにした。同ネットワークは産官学の関係機関が参加する任意団体で、日本原子力研究開発機構(JAEA)と原産協会がハブ機関として共同事務局を務める予定である。

同理事長はまた、国際的なレベルでも原子力先進国や国際機関による地域連携ネットワークの創設を提案。アジア太平洋地域や欧州、南北アメリカなど、世界の各地域におけるそれぞれのネットワークが有効に機能することにより、IAEAなど国際機関との間でもより一層、連携が進むだろうと説明した。


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