IAEA 国際濃縮センターを創設 ロスアトムと合意文書

国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長は3月29日、IAEA加盟国に低濃縮ウラン(LEU)を供給する国際ウラン濃縮センター(IUEC)をロシアに設置するため、ロシアの原子力総合企業であるロスアトム社のS.キリエンコ総裁と正式な合意文書に調印した。濃縮という機微な技術の拡散を防ぎつつ、各国が滞りなく原子炉を操業する権利の保障を目指したシステムだが、供給の前提はあくまでも政治的な理由による供給途絶時の「最後の手段」。同センターが実際に機能する機会について疑問視する声があるほか、ロシアが進めている濃縮事業をさらに円滑に進める意図があるものと見られている。

ウランの濃縮・備蓄センターはIAEAの保障措置の下、ロシア南部のアンガルスク濃縮工場に置かれ、常時、濃縮度2〜4.95%の六フッ化ウラン、120トン(2億5000万ドル相当)を備蓄。技術上および商業上の事由とは無関係にIAEA加盟国へのLEU供給が途絶した場合、IAEA理事会は供給申請国に保障措置上の懸念が無いことを確認審査する。すべての基準をクリアしているとIAEA事務局長が判断すれば、ロシアはIUECのLEUをサンクトペテルブルグ経由で申請国に移送することになる。備蓄されているLEUで、大型原子炉2基分のフル炉心装荷量、あるいは取替え用燃料6回分が賄えるとしている。

取引きはスポット市場の標準価格に準じて行われ、収益は備蓄の補充に当てられるしくみ。IAEAはこれらの財務取引きについて処理責任を負う。ただし、IUECの設置、およびLEUの貯蔵や安全保障、保障措置など、維持管理に関する資金はロシア政府が出資することになっている。

核燃料の供給保証に対する多国間アプローチについては、古くは1950年代から様々な案が提唱されてきた。有力なものとして、慈善財団である「核の脅威イニシアチブ(NTI)」による財政支援を元に、主要原子力国が出資し合う案などが検討されたが、IAEA理事会は昨年11月、ロシアの提案を承認するとともに、事務局長とロシア政府による合意文書の調印を公認していた。


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