割引率5%で 原子力が最も安価 NEAとIEAが発電コスト比較

経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)と国際エネルギー機関(IEA)の共同調査でまとめられた2010年版の「発電コスト予測」で、今後の発電コストは資金調達コストおよび炭素価格(炭素税およびCO排出量取引の市場価格)という主要パラメータ次第で大きく左右されるとの結論が明らかになった。

電源ごとの発電コストを比較したこの調査報告書は、17のOECD加盟国および4つの非加盟国から200もの発電所のデータを収集し、各国の専門家で構成された特別グループの分析・監修により作成。1983年以降、数年毎にまとめられており、2010年版は第7版目となる。

コスト計算の共通基準としては、今回調査で初めて、CO1トン当たり30米ドルの炭素価格を想定。耐用年数分のコストを1MWh当たりの発電コストに平準化(LCOE)し、5%と10%の割引率(将来価値を現在価値に割り引くための年間利率)を採用している。

その結果、ベース・ロード発電において、世界でも一貫して経済的に有利な発電技術というものは存在せず、発電技術ごとの競争力は各国内の諸条件や、いくつかのファクター、特に資本費と炭素価格に影響されるとしている。

まず、資金調達コストが低ケース(割引率5%)の場合、原子力の競争力が最も高く、石炭火力とCOの回収・貯留(CCS)が後に続く。豪州などのように石炭が安い国では特に、石炭火力が優位だ。しかし、高ケース(同10%)では、石炭火力が第1位で、以下CCS、複合サイクル・ガスタービン(CCGT)の順で安い。たとえ石炭価格が安い国でもCCS無しの石炭火力が常に優位。最も重要なのは割引率で、炭素価格と燃料価格の比重はそれほど高くないと分析している。

利率を抜きにすると、立地地域の資源と技術開発の速度に最も大きな影響を受けるのは再生可能エネルギー。今日、立地地域でのコンディションは概して良好なため、水力や風力発電は競争力のある発電技術といえる。

ただし、どの技術にも一長一短があり、今回の調査方法で必ずしも把握できるわけではなく、それぞれが個別の条件に左右される。

このような資本調達コストと炭素価格に関して言えば、政府の果たす役割が非常に重要となってくる。電源ごとに市場リスクや技術的なリスクなど、様々なリスクに直面するように、資本費も本来、リスクとして作用。この点で、原子力や再生可能エネルギーなど低炭素発電技術は特に脆弱と言えるが、政府が賢明なアクションを取ることによって、こうしたリスクの多くは軽減することが可能である。

同報告書について、NEAのエチャバリ事務局長は、「世界で数多くの国がCOの排出量削減を図りつつ設備投資を目指している時期なだけに、本報告書は政策立案担当者や業界の利害関係者らが将来の電源を選択する上で必要不可欠な基礎知識を提供できる」と強調。IEAの田中事務局長は「原子力や再生可能エネルギー、CCSなど低炭素発電技術の競争力を増強するには、資金調達コストと炭素価格の削減を目的とした政府の強力な後押しが必要だ」と訴えた。


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