【第43回原産年次大会】 セッション1 <パネル討論>

松井三生・中国電力副社長

電気事業者の役割は、安定供給、環境保全、経済性の「3E」を同時に達成し、良質で低廉な電気を消費者に提供することである。

さて、低炭素社会の構築に向けた電力業界の取組だが、供給サイドとしてはまず、安全確保を大前提に、既設原子力発電炉の利用率向上を掲げ、これら原子力を中心とする非化石エネルギーの比率を、20年度までに50%とすることを目指している。

一方、需要サイドへのエネルギー利用効率化については、「エコキュート」や電気自動車導入による電化推進などに取り組んでいる。

太陽光発電システムを設置可能な全国約1700万戸の住宅すべてに稼働させたとしても、原子力発電の方がはるかに効率的であり、「原子力発電の推進こそ、地球温暖化対策の最大の切り札」といえよう。このことは先般、閣議決定された地球温暖化対策基本法案にも明文化されている。

当社では、島根3、上関の新増設による原子力発電比率の拡大を経営の最重要課題に掲げている。今回の保守管理不備問題については、深く反省した上、全社を挙げて信頼回復に取り組んでいきたい。

鈴木達治郎・原子力委員長代理

第一に、温暖化対策として原子力が貢献するには、現状の3倍以上の導入が必要といわれている。また、あらゆるエネルギー選択肢も合わせて活用しなければならず、その中で原子力は確かに筆頭となるだろう。

ただし、国によっては、必ずしも原子力発電のコスト競争力が化石燃料に比べて高いわけではなく、その導入・普及を進めるためには、「炭素に価格を与え市場にシグナルを送る」のも1つの手段ではないか。海外のカーボン・クレジット購入は、経済的にも有効だという専門家の意見もある。

そして、原子力固有の問題として、安全性と社会受容、放射性廃棄物、核不拡散、これら「3つの課題」を解決しないと期待に応えられないだろう。

IAEAによると、現在、世界で稼働中の原子炉の寿命を40年とした場合、25年までに、約260基のリプレース需要が発生するとしており、これらを更新しない限り、気候変動対策の手段としての原子力の将来には厳しいものがある。過去の予測では、1973年時点で、世界の原子力発電規模は、90年までに1000GWを越すなどと、多大な期待が持たれていたのだが、現実にはまったくそれに及んでいない。今また、これを伸ばしていこうというときに、再び「期待と現実のギャップ」とならないためにも、先に述べた「3つの課題」の解決は不可欠だろう。

秋元圭吾・地球環境産業技術研究機構システム研究グループリーダー

COP15をみて、地球温暖化は、すべての国が長期にわたって、持続的に取り組まなければならない非常に難しい問題であると改めて感じた。現状では、何か1つの技術でこれが解決できるわけはなく、原子力も然りで、様々な技術の中で、有望なものを、適材適所で、導入していく必要があると思う。

原子力は、多々ある技術の中で、確かに有望なものであるには違いないのだが、より消費者の意識を高揚する「技術システム」も開発せねばならない。私どもの研究による、これはあくまでも仮想・推定だが、もし、今の社会構造のまま、経済活動量だけが増大していったとすると、2050年には、世界のCO排出量は何と870億トンにも膨れ上がる。楽観的に見積もったとしても、現在の2倍に相当する480億トンの排出量になると予測され、このことは、「50年までに半減」という世界の掲げる目標達成には、実質4分の1に削減する努力が必要だということを意味しているのだ。つまり、非常にチャレンジングな命題が課されているということをまず、われわれは理解しなければならない。

ここで、考えなければならないのは、システム的な技術開発も非常に重要ということだ。原子力は、コスト効率的とはいっても、温暖化対策への効果は別として、他のエネルギー源と得られる効用は基本的には同じだ。そのため、より安価にエネルギーを供給することが社会にとって重要となる。例としては、ITを利用した高度な交通システムなど、温暖化対策以外の便益が生じるようなシステムの構築が求められるのだが、何といっても、人々の意識が上がらなければ、環境と経済はバランスよく両立しないのではないか。

東嶋和子氏(科学ジャーナリスト)

温室効果ガス排出の観点で、原子力発電の優位性は明らかだが、それは、世界で本当に通用するのだろうか。アジアを始めとする新興諸国では、COに加え、その他のエネルギー生産で発生する環境汚染物質が、あるいは、風力発電にしても、騒音の問題もあるのだから、地球規模の気候変動問題だけでなく、地域レベルの環境問題にも貢献することも考えるべきだと思っている。

環境問題と資源問題をともに考えた場合、新エネルギーも原子力も、どちらも進めていかねばならないのだが、新エネルギーは、供給安定性、価格、導入可能性の点で劣っている。したがって現時点、温室効果ガス抑制、エネルギー自給率向上、経済性、需要を満たすことのできるエネルギー源は、「日本にとっては原子力」ということになる。

原子力発電は、CO削減だけで考えれば、気候変動問題に対処する「切り札」といえるかもしれないが、環境問題というものは非常に幅広い。エネルギーに関心を持つ一般市民と話す場合、私は、「エネルギーの地産地消」を呼びかけている。「エネルギーは適材適所」なのであり、ドイツやデンマークでやっているから、日本でもできるというものではない。まずは、地域の資源を見つめ直すことが、環境エネルギー教育にもつがなるのだ。


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