【第43回原産年次大会】 セッション2 Q.ヤン中国核能行業協会副理事長、「躍進する中国の原子力発電開発戦略」

中国では08年の1次エネルギー生産量と消費量がそれぞれ285億トンと260億トンに達し、世界最大のエネルギー生産国になるとともに消費量では世界第2位に達している。しかし、13億人という巨大な人口を抱えるため、1人当たりのエネルギー消費量は2500kWhと米国の6分の1にすぎない。石炭は中国のエネルギー源の69%を占めるが、エネルギー構成の不均衡是正と環境保護の観点からクリーンで再生可能なエネルギーを大きく拡大する方針である。

石炭依存の緩和と温室効果ガスの削減が中国のエネルギー開発戦略の優先事項であり、胡錦濤主席は1次エネルギー消費に占める非化石燃料の割合を20年までに約15%にすることを約束。安全でクリーンかつ効率的な原子力は人民の最良の選択といえる。

1980年代に始まった原子力発電は、08年には運転中の11基で692.2億kWhの電力を供給。石炭換算で2312万トンの削減効果を発揮している。開発方針はすでに05年に「適度の開発」から「積極的開発」にシフト済みで、管轄当局によると発電容量は30年までに0.2GWに達するよう、年に8〜10基建設されることになっている。

現在、建設中の原子力発電所は嶺澳二期、秦山二期、紅沿河、寧徳、福清一期、方家山、陽江、三門、海陽、台山など。近く着工する発電所としては海南島の昌江(65万kWのCNP600×2基)、山東省の石島湾(20万kWのHTR1基)、広西自治区の防城港(108万kWのCPR1000×2基)がある。

原子力開発上の課題としては他の諸国と同様、(1)安全性(2)経済性(3)放射性廃棄物管理(4)核兵器の拡散――があるほか、中国独自の課題として、核燃料の供給や大型機器の製造と国産化、自国での技術革新、専門的な人材不足が挙げられる。

(2)に関しては、稼働中の6基の電力購入価格が約7セント/kWhと低価格。現地での設計と製造等により、経済効率はさらに向上する見通しだ。(3)の低レベル廃棄物処理については地域単位で実施、北西部に処理場を建設しているほか、3か所で後続を建設予定だ。高レベルに関しては北西部に処理拠点1か所を建設する計画になっている。

燃料供給という課題の解決策としては、FBRを活用したクローズド・サイクルの方針を採用。機器製造については、すでに大型機器や重機の製造拠点5か所が設立済みだ。さらに、第2世代+原子炉の国産化率はすでに80%を上回っているほか、AP1000についても国産化プロセスを加速中である。


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