【第43回原産年次大会】 セッション3 各氏がキーノート発言 共生や理解促進めぐり 島根点検もれ 「信頼回復を」

大谷氏 島根県の県庁所在地で政治経済の中心地である松江市に島根原子力発電所が立地していることの意味は大きい。島根1号機の営業運転開始以来、順調に安全・安定運転に努めてきていたが、今回の点検もれ事象は残念なことだ。根本的な原因を徹底的に追求し、早急に再発防止策を講じてほしい。いかに地域の信頼を回復するかは重要であり、今後も信頼される発電所となるよう期待している。

島根3号機の建設は地元発注等、直接的な経済効果と関連しての波及効果・雇用効果もあり、地元経済にとって大きな効果を与えている。また電源三法交付金で毎年、道路・教育文化施設等に関するたくさんの事業を実施しており、原子力発電所があることによって、地域へ多大な経済効果を生み出している。島根県では毎年5500人ほど人口が減少している中、交付金制度を使った企業誘致制度は、若者定住や、U・Iターンの促進等、地域の活性化に密接に結びついている。

石原氏 2005年の合併により、全国唯一の原子力発電所をもつ県庁所在地になった際に、市民の立場で、原子力を中心に身近なエネルギー問題や環境を勉強しはじめたのが松江エネルギー研究会のはじまりだ。「原子力への正確な情報を知ることから始まる」を視点に置き、島根県と協働で活動している。国は市民にとって第一に、原子力への「安心・安全」を前提とした上で、国のエネルギー政策・原子力政策に沿う重要な事業であると認識をし、私たち市民は正確な情報の共有、知る機会への提供を一番に期待したい。また自然環境が豊かで、歴史・文化遺産のある観光都市松江として、原子力発電所が立地していることの調和融合の視点も大切と考えている。

山本氏 リスクは「危険なこと」ではなく、「有害な影響が生ずる確率とその深刻さの度合い」であり、「ある」「ない」ではなく「大きい」「小さい」という尺度で考えるものだ。連続した量的概念と考えることでリスク管理が可能になるし、代替技術のリスクとの比較もできるようになる。リスクの分析過程と結果をもとに、丁寧に意見交換することで、真のリスクコミュニケーションを図ることが重要だ。それによって社会全体のリスクリテラシー向上にもつながる。

山名氏 今思えば、過去、塀の中にいた研究者であったように思う。いま塀の外に出て原子力政策等にかかわる仕事をし始めて、技術者と一般市民との意識の乖離に気づいた。原子力事業が認知されるためには、(1)安全性に対する理解や納得(2)事業の意義や意味への理解(3)事業者や当局への信頼――という3つの要素がある。その評価はコスト、便益、リスクの3つの要素だ。

技術者が市民とよりよい関係を作るためには定常的に、直接説明する機会を持つなど、日ごろからの取り組みが大切だ。

井川氏 結論を言えば、原子力が理解されることはない、という前提から考える必要がある。歴史的にも科学が理解されない状況があった。

今回判明した島根発電所の点検もれの発表資料をみると誰を想定した発表なのか、何が大切なメッセージなのか、読むのが難しい資料だ。報道が悪いとよく言われるが、発表のあり方や資料内容の工夫をすべきだ。社会に受け入れられるためには、政治的にみれば原子力の位置づけを明確にすべきであり、経済的には地域の振興策が不可欠なのだが、現政権の政策が必ずしも明確でない。


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