【第43回原産年次大会】 セッション3 パネル討論 地域の特色発信めざせ 分かりやすさ 翻訳に学の役割も

<地域振興>

石原氏 地域振興にお金がおりていることは、聞いてはいるが、現実に生活の中であまり分かっていない。産業や雇用の部分では、3号機の建設で雇用があるが、点検や建設の時期の一過性のものなので、継続的なものになればと思う。

大谷氏 立地地域と消費地の関係というのは、中央と地方の縮図みたいなところがあり、地方の自立と言われているが、経済的には難しいと思う。国全体からみると都市と地域にはそれぞれの役割と価値がある。最近地元の銀行が森林保全を呼びかけて、企業もそれに呼応していろんな活動をしているが、その他NPOの活動など経済性で救えないような活動を支援することもしつつ、地域振興を図っていくことが必要だと考える。

井川氏 地域の方が知恵を絞ってもらいたいのは、医療や教育など「原子力と○○の町」ということを考えてほしい。そのために国や電力の支援を受けることが大切だ。道路や港湾、空港など全国どこにでもあるものでは地域の特色が出てこない。

<信頼関係>

大谷氏 今回の島根発電所の点検もれのことは自身本当にびっくりし、冷や水を浴びせられた感じがある。商工会議所自体も地域振興以外に、あらゆる側面で検討する場があってもよかったと感じた次第だ。

石原氏 信頼をどう回復していくかによって、市民が原子力にどう向き合うかということになってくると思う。国も電力会社も、さらに住民も、「原子力は何ぞや」ということに向き合わないといけないと改めて感じた。

山名氏 大事なことは品質管理のシステムをきちんと育てるということだ。現場の技術者の意識と、全体を管理しているマネージャーの意識、地元が何を望んでいるか、など含めて全体としての品質管理をきちんとするということだ。

山本氏 現場の技術者と一般では、受け止め方が違う。技術者との乖離が問題で、やはり一般の皆さんがどういう印象をもつかという部分を、それぞれの科学技術の専門家が考えるべきだ。

井川氏 今回のことは点検、管理項目が増え、複雑怪奇な仕組みの不合理なところを維持し続けたところにも問題の一端があったと考える。中国電力は、この機に提案すべきで、よりよいシステムを作る機会にしてほしい。

石原氏 弁護するわけではないが、出雲人気質を感じる。他の電力以上に自分たちが作った点検項目が細かいところがあるのではないか。システム上の改善などをいい機会とみて、問題を洗い出していくことが大切だ。

大谷氏 技術的な安全性の問題というより、システムの問題というとらえ方は私たちも同様だ。地域の住民の信頼を得なければ原子力発電所は成り立たないということを、現場の人たちが意識していくことが必要だ。

<情報の分かりやすさと専門家の役割>

山本氏 農薬の登録にかかわった経験では、市民感覚や安心の部分まで含めて行政から求められることは、専門家にすればもう十分ではないか、ということもある。その点を一般の人たちに理解してもらうよう、少しでもやさしい言葉で説明していくことが必要だ。

井川氏 大学が難しい内容のトランスレータの役割を果たすということもあるだろう。翻訳の取り組みをNPOなどを興して行い、地方自治体もそれを取り込むといったアイデアも提言できる。

石原氏 何かあったときに中国電力からの資料が送られてくるが、やはり説明してもらわないと分からない。市民にも、何がわからないのかを聞いてほしいと思う。

山名氏 翻訳は重要だが、国のものなどを見ても翻訳方法が硬直化しているというか、ステレオタイプ化している面を見受ける。最近は、市民はインターネットなどで勉強しているので、分からないことを教えてほしいという求めも出てくる。対話の場でそれぞれの言葉で語る必要がでてくる。

山本氏 いろいろな場面で、大学としても発信の役割を果たしていきたい。

大谷氏 大学がその役割を果たしていただけるのはよいことだと思う。

石原氏 住民の立場からすると、知りたいことの正確な情報を知らせてほしいというのが一番だ。市民の側も「100%安全」ということを、議論しながらよく考えていくことが必要だと思う。


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