【新刊抄】 「次世代に伝えたい原子力重大事件&エピソード」 飯高 季雄 著

副題に「これを知らなきゃ原子力は語れない」とある。筆者は旧日本原子力産業会議で原子力産業新聞やニュークレオニクス・ウィーク日本語版の編集長を務め、分かりやすい文章を書くことで定評があった。

筆者は20世紀を、あえて「原子力の世紀」と捉え、エックス線の発見から原子爆弾の研究開発、そして第2次世界大戦後の原子力平和利用の黎明期、その後の原子力発電の拡大期へと続くと説く。

ともすると無機質で難解に陥りやすい原子力の世界を、筆者は「人を前面にすえ、かつストーリー性を打ち出すことで、原子力との距離感を少しでも縮めるよう意を配した」という。

世界ではいま、二酸化炭素が発生しないことから、原子力発電への期待は大きく、明るい展望が広がりつつあるが、歴史を紐解けば順調な進展ばかりではなく、原子力船「むつ」の混迷、米国スリーマイル島原子力発電所事故、旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所事故、そして日本で最初の原子力犠牲者を出したジェー・シー・オー社の核燃料加工施設での臨界事故なども取り上げ、事実関係だけでなく、その当時の原子力報道ぶりまで論評している。

本体価格2200円。246ページ、日刊工業新聞社発行。(き)


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