エネ研調査 稼働率向上で米韓と比較 原発の重要性、共通認識に

日本エネルギー経済研究所は11日、「米・欧・韓の原子力発電所設備利用率向上に向けた取り組み――日本は何を学ぶべきか」と題する調査研究を発表した。昨年度の資源エネルギー庁からの受託研究「発電用原子炉等利用環境調査――原子力発電所の有効活用に関する国際動向等調査報告書」の成果の一部。

米国では、設備利用率が90年代の80%前後から02年には92%と大きく改善され、その原因として@運転等に関わるリスク・トラブル情報の共有化と有効活用A運転中の設備保全・補修等の実施B安全規制の合理化・適正化等による計画停止時間の短縮C計画外停止からの再起動プロセスの合理化による計画外停止時間の短縮――などを挙げた。

韓国の設備利用率も90年代から大きく改善し、08年には93%と米国並みの高水準を達成しており、特に韓国では、米国で良好な実績を上げている発電所の点検・補修工程表を自国の実績と比較し、作業単位ごとの短縮を図ったことが大きな成果につながっていると分析した。また、計画外停止からの再起動の迅速化にも取組み、プラント当たりの年平均計画外停止は50時間以下となっている。これに燃料交換を中心とした計画停止400〜550時間を含めた年間平均停止時間は400〜600時間程度に抑えることに成功している。

今回調査した対象国に共通した特徴として、@発電所の運転や計画外停止からの再起動可否を技術的安全性の面から判断する権限は公的安全規制機関に一元化されているA原子力発電所を重要なエネルギー・インフラとして最大限合理的に活用することは社会の利益に資するとの基本認識が関係者に確立されている――ことを特筆している。

日本への適用としては、@リスク・運転情報の共有化と有効活用A運転中予防保全活動範囲の拡大に向けた基準整備Bベスト・プラクティスを参照した定期検査工程の作業見直し(効率化)C適切かつ合理的な規制の実施――などを挙げ、「現実的で合理的な取組みを、我が国関係者の連携強化の下、着実かつ迅速に進めていくことが望まれる」と結論付けている。

日本の設備利用率低迷の分析では、想定外の事象に伴う「計画外停止」が07年以降長期化していることに加え、01年以降には定期検査などに伴う「計画停止時間」も極めて長期化している点を指摘している。

報告では、日本でも定期検査のための停止期間が30日以下であった例が過去にはいくつもあり、01〜02年ごろの中部電力・浜岡4号、関西電力・大飯4号、日本原子力発電・敦賀2号の例を挙げて、「日本もやればできる」と指摘している。


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