スウェーデン議会が脱原子力撤回法案可決 既存炉10基の建て替え可能に

スウェーデン議会は17日、約30年前に制定した脱原子力政策の撤回法案を賛成174、反対172の僅差で可決した。現在稼働している原子炉10基の建て替えが可能になるほか、事故時に原子力事業者が支払う賠償金額が引き上げられることになった。しかし、同法案の発効期日は政府提案の今年8月から来年1月1日に修正されている。票決数が伯仲していた点からも、今年9月の総選挙で原子力問題が争点の1つとなることは確実。近年の調査でも引き続き、同国国民の過半数が原子力に好意的という結果が出ているとはいえ、反原子力の社会民主労働党が巻き返した場合、現実に新たな原子炉建設まで漕ぎ付けるか否かは微妙な状況だ。

スウェーデンでは米TMI事故の翌1980年の国民投票の結果を受け、2010年までに原子力発電所を全廃するという方針を国会で決議。99年にバーセベック1号機、2005年に同2号機を早期閉鎖した。06年の総選挙で、12年ぶりに社会民主労働党政権から中道右派4党による連合政権に交代。代替電源の見通しが立たない現状を背景に、一部与党が「原子炉の新設を排除しない」とする報告書を作成したほか、07年に政府も原子炉全廃の期限を撤回するなど、徐々に脱原発政策撤廃の機運が高まってきていた。09年2月になると政府は脱原子力政策の撤廃を盛り込んだ長期エネルギー戦略を公表し、大規模な政策転換を決意。同年中は6月の議会承認を受けて、新規炉の建設禁止措置撤廃法案の作成準備を進めていた。

今回の決定事項として明記されたのは、現在稼働中の原子炉10基に限り、既存の原子力3サイト(フォルスマルク、リングハルス、およびオスカーシャム)での建て替えが可能ということ。ただし、これらの建て替え計画に国の助成金が交付されることはない。

また、原子力発電所の所有者は事故時の損害賠償について全面的な責任を負うとし、必要な場合は、事業者の保有資産すべてを要求されることもあり得る。事業者が支払う賠償額は、パリ条約で1事故あたりの責任限度額が7億ユーロに改正されたことに鑑み、現在の30億クローナから120億クローナ(12億ユーロ)に引き上げられる。


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