【原子力ワンポイント】 原子力発電の役割と今後の展開(3) 既設プラントの「出力向上」も確実に貢献へ

―それじゃあ、出力向上について教えてよ。

原子炉は、安全性を確保するため、熱出力の定格値を定め、運転中これを超えないように管理しているんだ。安全性を確認した上で、この定格値をより大きな値に見直せば、以前よりも大きな出力で運転できるようになる。見直しの幅は1%以内から20%を超える例もある。海外では30年以上も前から認められてきており、たくさん事例がある上、最近の原子力発電回帰の世界的な流れを受けて、新設よりも即効性があり経済性も高い方策として導入事例が増えているよ。米国では出力向上によって、これまでに約500万kW以上と5基新設に相当するほど電気出力が向上しているんだ。

―どういった仕組みなの?

新燃料を多く使えば、原子炉の熱出力を上げることができる。原子炉でより多くの熱エネルギーが発生し、蒸気に変換される量が増え、蒸気流量が増える。その結果、タービンを回す駆動力が強くなり、電気が多く作られる。当然、原子炉だけでなく、タービン、発電機、配管なども出力の増加に耐える必要があるので、安全性は事前にしっかり評価される。機器の性能アップが必要になる場合もあるけど、高経年化対策や信頼性向上のために取り替えた設備を活用することも可能だよ。

―安全性は確保されるんだよね?

蒸気流量が増えたりすることについて、事前に十分評価した上で、海外のトラブル経験を踏まえ、点検や運転においてどのような安全確認をしていけばよいか、方法論は確立しているんだ。事業者は、しっかりと安全確認していくことが大事だね。

―日本でも、もうやってるの?

日本原子力発電株式会社の東海第二発電所で、原子炉熱出力を約5%向上させる計画があるんだ。地元の了解を得たうえ、国の審査で安全性が確認されれば、高圧タービンの工事を行い、出力向上運転が開始される見通しだ。

―他にもこれから進めていくの?

これまでにも、定格熱出力一定運転の導入や高効率機器の採用などで、全国で原子力発電所約1基分(約80万kW)の電気出力向上の実績がある。さらに既設発電所の有効活用を図るため、出力向上を行うわけだけど、東海第二発電所の導入計画の成果を踏まえて、順次他プラントに展開していくことになるはずだ。仮にすでにある発電所(全部で4884万kW)の出力向上を平均2%行ったとしたら、もう1基分の効果だよ。

CO排出削減には、原子力発電所の新増設と合わせ、既設プラントの有効活用としての設備利用率向上と出力向上を切り札として、再生可能エネルギーや省エネルギーなどの他の施策と組み合わせていくことが重要だ。

(このシリーズ終わり)


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