被ばく管理を一元化へ 日本学術会議 国に制度化求める

日本学術会議(金澤一郎会長)は、原子力施設、医療施設、工業施設などあらゆる原子力・放射線利用施設の領域で業務に従事する全放射線作業者の業務上の被ばく線量を包括的に把握できるような制度の導入などを国に求めた報告書をとりまとめ、2日発表した。

また、放射線作業者個人の法的管理期間内の被ばく線量および生涯線量を一括して把握できるように、作業場所が異なっても同一個人であることを確認できるように「名寄せ」するシステムの導入も必要とした。

報告書では、「放射線作業者の被ばく線量の把握システムを公的機関などで確立することの必要性は、原子力委員会など国レベルで昭和40年代から認識されているにもかかわらず、未だに実現されていない」と指摘。放射線作業者のキャリアの多様化、国際的な雇用の流動化に対応するためには、放射線作業者個人の法的管理期間内の被ばく線量および生涯線量を一括把握するための一元管理は、「喫緊の課題」であると訴えている。

特に、放射線作業者の移動が多い医療・研究領域などの放射線作業者については、法令上の線量限度を超えてないことを確認するシステムすらできていない、としている。

これらの制度を導入するためには、国に放射線作業者の被ばく一元管理の必要性について認識してもらうことが不可欠であり、関連法令として@施設管理者が被ばく線量を国へ報告することの制度化A認証済み線量測定サービス制度などの制定B被ばくの一元管理に必要な情報に関する個人情報保護法の適用除外――が必要だとしている。

そのためにはまず、関係省庁や関連事業者など府省横断的な検討会を設置し、一元化に向けた具体的な方策の検討を開始すべきと提言している。

提言は、日本学術会議のホームページ(http://www.scj.go.jp/)で公表されている。

問い合わせは、日本学術会議「放射線・放射能の利用に伴う課題検討分科会」の柴田徳思委員長(日本原子力研究開発機構J−PARCセンター)(電話029‐282‐5021)まで。


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