原子力機構 原子力委に状況報告 FBR 実用化開発が順調 軽水炉と「コスト競合可能」

日本原子力研究開発機構は13日、高速増殖炉実用化研究開発(FaCT)の進展状況を原子力委員会に報告した。主概念となるナトリウム冷却炉、先進湿式法再処理、簡素化ペレット法燃料製造の組み合わせを中心に進められた革新的技術22項目のうち、12項目を実用化に向け「採用可能」と判断し、同委がFaCT開始時に示した性能目標についても、「概ね達成」と評価、軽水炉とのコスト比較でも「競合できる」とした。

FaCTは、高速増殖炉と、それに伴う燃料サイクル技術の2050年頃からの商業ベース導入を目指し、06年度より実施しているもの。

FaCTでは、50年頃のFBR本格導入に向け、炉システムと燃料サイクルシステムに係わる革新的技術について、「安全性および信頼性」、「持続可能性」、「経済性」、「核不拡散性」の4つの観点で開発目標を設定、研究開発を進め、その成果を実用化に向けた概念設計として取りまとめるとしている。昨夏の中間報告では、15年に開発目標達成可能なFBRサイクルの実証施設と実用施設の概念設計、実用化に至る研究開発計画を提示すべく、本年中に革新的技術の採否を判断することとしていた。

原子力機構次世代原子炉システム研究開発部門の説明によると、まず、炉システムでは、革新技術を高燃焼度炉心・燃料、安全性向上技術、コンパクト化原子炉構造、直管二重伝熱管蒸気発生器、高速炉用免震システムなど――10項目に再整理の上、評価を実施、このうち、これまでに6項目について、「実用炉に採用できる見通しが得られ、実証炉の概念設計に適用する技術として対象とできる」と判断した。一方、燃料サイクルシステムでは、再処理技術と燃料製造技術で計12項目の技術を評価し、6項目を「採用可能」と判断した。

また、FaCT開始時に原子力委員会が提示した性能目標に対する達成度評価も合わせて報告された。革新技術採否判断を踏まえた150万kWのツインプラントの概念で、安全性、経済性、環境影響、資源の利用効率、核拡散抵抗性、軽水炉と高速炉の共生の観点から、できるだけ定量的に評価を行ったところ、性能目標は「概ね達成」と判断。目標のうち経済性は、2基建設費約7800億円、工期約37〜40か月と試算、将来の軽水炉と比較して建設費は幾分高くなるものの、高い熱効率、高燃焼度燃料の採用等の効果により、「競合できる」と評価した。その他、摘出された課題に対しては、11年からのフェーズUの中で、その対策を考慮した検討を進めていく。

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文部科学省、経済産業省、電気事業連合会、日本電機工業会、原子力機構からなる「FBRサイクル実証プロセス五者協議会」は2日、FBRサイクルの早期実用化に向けた取組方針をまとめた。

FaCTプロジェクトの重要な局面との認識から、炉システム、燃料サイクルともに、15年の実用化像提示に向け着実に研究開発を進めるほか、25年の実証炉運転開始を踏まえ、15年より前からのサイト選定や安全審査等の準備着手の必要から、国、原子力機構、電気事業者は協力して、適切な対応のあり方を本年度中に検討することとしている。


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