厚労省 食品照射で報告 「国で必要性異なる」

厚生労働省は6日、食品照射についての科学的知見等に関する調査結果について、原子力委員会に報告した。同委員会が06年10月の決定に基づいて、厚労省に対して食品安全行政の観点から調査、検討を行うよう要請していたもの。

調査結果では、食品健康影響評価に必要な科学的知見として、少なくとも照射食品中の放射線特異的分解生成物であるアルキルシクロブタノン類について、生成量、推定暴露量、毒性のデータが不足していると考えられるとしている。

今後の方針としては、(1)アルキルシクロブタノン類に関する科学的知見の情報収集を関係者に要請(2)国民との相互理解を一層進めるためのさらなる取組みを原子力委員会に要請――することを挙げた。

原子力委員からは、尾本委員が「照射のスコープ(範囲)が海外と日本で差が拡大しているという認識を持っている。データが不足しているので情報収集が必要との説明だが、実際には諸外国では認められているのに、日本では認められていない合理的な根拠が何かあるのか」と質問した。これに対し厚労省側は、「日本と世界で安全の基準が違うのかという点では、基本的には違いはないと理解している」としながらも、「WHOも、このアルキルシクロブタノン類についてはまだ足りない科学的な知見があると明確に認めている」と説明。さらに、欧米で使用が認められている理由については、「その必要性の状況が日本とは違うからではないか」と述べ、「例えば、日本ではスパイスの処理については、放射線照射を使わずに行える事実がある。肉類については、日本ではもともと生ものを食べる食文化を持っていたからではないか」と説明した。

秋庭委員は、「ニーズがあるところが自らアルキルシクロブタノン類の情報収集を行い、証明しなければならないようだが、負担の大きさから照射をやるところは出てこないのではないか」と質問した。

これに対し厚労省側は、食品衛生の分野においては、従来からその技術を必要とする事業者が必要な資料を添えて評価を依頼してくる手続きになっており、「スパイス業界にも情報収集をお願いしている」と回答。「簡単にできることではないものの、他の事例から見てそれほど大きな負担ではないのではないかと考えている」と付け加えた。


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