科学博物館 8月に初の原子力展示 知財を後世に伝える試み

国立科学博物館主催の「核と人工物の歴史と科学」と題する講演会が1日と2日、東京・上野の国立科学博物館で開かれた。人間が努力して作り上げてきた人工物の代表として「原子力」を取り上げ、歴史的な考察を加えて、新たな時代を切り開く基盤づくりの重要性を指摘した。

初日は、「新しいシステム(ABWR)の国際共同開発の経験と今後への提言」と題して日立GEニュークリア・エナジー社の斉藤莊蔵会長、「オーラル・ヒストリーと書誌分析から考える原子力の過去、現在、未来」と題して岩田修一・東京大学院教授が講演した。

斉藤会長は、敦賀1号、美浜1号機が運転開始した1970年に入社、以来40年のBWR開発の経緯を紹介した。ブロック工法などの導入で、1基当たりの工事ピーク時の作業者は2500人から現在では1500人程度にまでに減少させることができるとした。

次世代軽水炉の開発では、概念設計をほぼまとめたところだとした上で、ウランの節約、使用済み燃料の減少などをさらに進め、燃焼度も現在の4万5000MWd/トンから7万5000MWd/トンにまで高めたいとした。

新規導入国向けプラントの輸出では、「最新の標準的なものを輸出したい」とし、次世代軽水炉についても、「日本市場だけでは少ないので、国際展開を前提に考えている」と述べた。

岩田教授は、8月に国立科学博物館として初めて原子力関係の展示を行うため、原子力の歴史的な背景から説き起こし、インターネットで公開情報をどこまで調べられるかを試み、さらに多くの識者からオーラル・ヒストリーを取りまとめ、それらの資料から展示物を作成して、博物館で展示したい、とした。

宇宙の起源から説き起こし、20億年前にアフリカ・ガボン共和国オクロにあった天然の原子炉、核分裂の発見(1938年)より前から製造・利用されていたウランガラスの例、核分裂の体系を示した模型、そして広島・長崎の原爆、最近では国際原子力情報システム(INIS)を駆使した部門別研究論文数や原子炉の分類などを紹介し、“コモンズ(共通の知的基盤)”の確立を目指したい、と述べた。

同氏は、高レベル放射性廃棄物の処分場選定などについても、「データを公開し、政策決定プロセスを透明化し、後世の人達から見て恥ずかしくない決め方をすれば良いのではないか」と述べた。


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