法制検討会 安全協定で提案

日本原子力学会は第4回「原子力法制の在り方検討委員会」(略称=原子力法制検討会)を27日、約1年ぶりに東京都内で開催した(=写真)。いままでの論点整理から、具体的提案にまで踏み込み、地元との安全協定のあり方や、事業者側から規制当局への改善要望なども出された。

同委員長を務めていた班目春樹・東京大学院教授が原子力安全委員長に就任したのに伴い、後任委員長には「社会と法制度設計分科会」の主査を務めてきた城山英明・東京大学院法学政治学研究科教授が就任した。

会合では昨年度の研究成果報告として、まず、『社会と法制度』分科会の城山教授が説明した。

城山主査は(1)原子力安全規制体制の課題と今後の対応の選択肢(2)安全協定と地方自治体の役割をめぐる制度オプションの検討――の2点に絞って報告した。

特に今回、現行制度の社会的側面として、「プラントの計画外停止後の運転再開で、公式的法的手続きではないが、安全協定に基づく立地道県知事の了解取得が難航している」との問題意識から、安全協定の課題を指摘。協定内容も歴史的に拡大してきており、報告対象事項の増加、事前了解対象の拡大、さまざまな努力義務の新設など、各地域で多様性をもったものとなっている、とした。

安全協定の評価としては、(1)住民への情報周知という点で重要な役割を果している(2)意志決定プロセスが明示化されておらず、自治体首長の政治的判断が要請される(3)自治体レベルで技術的判断を確実に行うことに限界がある(4)議会手続きなどを経ておらず、公的規制との関係も明確でないため、透明性や正当性の観点から問題(5)自治体側の責務も不明確――などの点を列挙した。

城山主査はこれらの点を踏まえて、4つの制度オプションを提示したが、いずれも新しい中央の規制機関が自治体や住民に対して、今よりも一層、協議や説明責任を果すべきだ、と強調した。

続いて『技術と法』の分科会成果では、東京大学院原子力国際専攻の西脇由弘氏が報告した。

西脇氏は、米機械学会(ASME)との比較やIAEAの総合的規制評価サービス(IRRS)の指摘などから、検査のあり方として、電気事業法と原子炉等規制法の統合までを視野に入れて検討すべきであり、(1)第三者検査制度の導入(2)プロセス型使用前検査の採用(3)ベンダー検査の新規導入(4)ホールドポイント付きの使用前検査の実施――などが必要だとした。

電事連の爾見豊氏は、原子力発電施設の設置変更許可要件について、事業者側からの問題点を指摘、設置許可に際し具体的な記載項目案(ECCSの例)などを提起した。

さらに、日本原燃の古橋和己氏は、原子燃料サイクル施設の規制課題について報告、特に六ヶ所再処理施設の竣工後、全施設の施設定期検査を受検すると、検査対象数が約1000件に達すると想定、「合理的な実施方法をとらなければ、検査の長期化、施設の操業期間確保が困難になる」と指摘、定格の年間800トンの再処理能力を確保するためには、施設の停止期間は2か月と想定しており、検査の仕方によっては2か月を超過する可能性もあることから、「現在、原子力安全・保安院と折衝中だ」とした。

さらに、MOX燃料工場の竣工までを見通し、現在の事業ごとの規制を変更し、「放射性廃棄物の処理および貯蔵の集中化」が可能になるような法制度を求めた。


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