NEAとIAEAのウラン需給予測 「100年以上の供給可能」

経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)と国際原子力機関(IAEA)は20日、世界のウラン資源量、生産量、および需要量について調査・分析した「ウラニウム2009(通称=レッド・ブック)」を公表し、「08年の消費ペースで行けば、現在の総確認資源量で今後100年以上は十分、世界の原子力発電所への供給が可能」との結論を明らかにした。

レッド・ブックは両機関が2年に一度、編纂しているもので、23回目の発行となる今回は、世界40か国から2009年1月1日現在の情報を収集。世界の大規模ウラン生産国だけでなく、生産開発を始めて間もない国のデータも初めて加えているのが今回の特徴だ。2035年までの世界の原子力設備容量や原子炉における所要量の予測についても、ウランの長期需給動向の分析と並行して掲載している。

〈ウラン資源量〉

2009年版ではウランの資源量、生産量および需要量がすべて、07年版以降、増加しており、世界各地で行われているウラン鉱山探査・開発活動への投資額は倍以上の伸び。総確認資源量は630万6300トン(15%増)となったが、この数値には80年代以降初めて、1キロあたり260ドル以下の天然ウラン鉱石、または1ポンドあたり100ドル以下のウラン精鉱(U)という高コスト資源が含まれている。確認資源の総量は全般的に増加したものの、採掘経費が増えたため低コスト資源の生産量は実質的に減少。ウランの消費率が08年程度であれば、これらの総確認資源量で100年以上は十分に供給することができる。

〈原子炉での所要量〉

原子力は価格競争力のあるベースロード電源であるだけでなく、温室効果ガスを排出せず、エネルギー供給保障にも大きな役割を果たし得るとの認識から、現在、数多くの国が原子力発電設備の拡大を計画中。2035年までに世界の原子力設備容量はネット出力で5億〜7億8500万kWに増加すると予測される。このことから、原子炉でのウラン所要量も年間8万7000〜14万トンに増加する見通しだ。

〈需給の将来見通し〉

過去の例にも見られるように、ウラン探査への投資増加は重要資源の発見や新規資源の確認につながる。仮に市場状況が一層改善されれば、追加の資源探査が誘発され、さらなる資源の確認をもたらすことが予想される。

従って、2035年までに世界の原子力設備容量が高ケースで拡大した場合でも、消費されるウランは総確認資源量の半分以下。あとはウランの需要量増加に合わせて、いかにタイムリーかつ環境上、持続可能な方法で鉱山開発していくかが課題として残る。

これに加え、ウランの生産容量について予測してみると、2020年代後半までは高ケースのウラン所要量を賄うことが可能と考えられる。しかしながら、既存鉱山での生産量増強や、新鉱山を開発する際の資金的な課題や期間などを鑑みると、これらの生産量拡大をすべて計画通りに進められるとは考えにくい。結果として、余剰在庫などの2次資源が引き続き必要となり、濃縮施設で残渣濃度を低く設定するなどの節約によって、ある程度まで補完することになると予測される。

このような需給状況は現在の技術水準で判断したものだが、新型炉や燃料サイクルなどの今後の技術開発がウランの長期的な供給力に良い方向に作用することも考えられ、ことによるとさらに供給力が延びることもあり得るだろう。


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