米規制委 原発のセキュリティ査察で報告

米原子力規制委員会(NRC)はこのほど、原子力関連施設のセキュリティ査察に関する2009年(暦年)年次報告書の公開版を公表し、米国内の商業用原子力発電所ではセキュリティ上、深刻な問題がなかったことを明らかにした。

同報告書はエネルギー政策法に基づいて議会提出用にまとめられているもので、09年版は5回目の作成。原子力施設における模擬戦闘訓練(FOF)を含めた査察プログラムと成果の概要を記載している。

それによると、NRCは昨年1月〜12月末までに国内の商業用原子力発電所で合計179回のセキュリティ査察を実施。これらの結果分析により180件の知見が得られたが、このうち168件(全体の94%)についてはセキュリティ上の深刻さは非常に低かった。また、12件については低〜中程度の深刻さだったとしている。

全査察のうち23回は、国内22の原子力発電所で行われたFOF査察。NRCの模擬敵対部隊が原子炉炉心や使用済み燃料プールなど、発電所の安全上重要な機器設備をターゲットに設定し、これらへの到達と破壊をシミュレートするプログラムで、応戦する事業者部隊との間で実戦さながらの模擬戦闘が繰り広げられる。

事業者側には事前に査察の実施が通達されるが、これは発電所の実際のセキュリティ維持を担当する職員と模擬戦闘に参加する職員の配置調整に十分な時間を与えるため。攻撃シナリオは事業者側の防衛戦略に内在する欠陥が探り出せるよう組み立てられており、ターゲット機器の模擬破壊等により、事業者側が高いレベルのセキュリティを実証できなかった場合は、NRCチームが発電所を離れる前に適切な補償対策を施すことになっている。

09年実績では、23回中3回のFOF査察でターゲット機器が模擬破壊されるに至った一方、合計29件の知見が得られたとしている。


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