イランのブシェール原発 燃料を搬入、年内起動へ

ロシアの原子力総合企業であるロスアトム社は21日、国際原子力機関(IAEA)の査察官による監視の下で、イランのブシェール原子力発電所(=写真)建屋内に初装荷燃料を搬入したと発表した。同炉では昨年2月末にダミー燃料を使った通水試験など起動準備段階に入っていたが、ウラン濃縮施設建設を巡る核兵器開発疑惑などにより、ロシアが2007に納入した新燃料はIAEAが封印していた。イランはすでに同炉からの使用済み燃料をロシアに返還することを約束。米国務省も今月17日、同発電所は平和利用目的であり濃縮活動とは無関係との考えを表明したことなどから、同炉の起動につながったと見られている。同炉は今後、年末までに発電段階に入る計画だが、イラン側では同炉への十分な燃料供給を将来的に確保していくためにも、国内の濃縮施設開発は継続する方針だ。

同発電所の建設は1974年に独シーメンス社が開始。しかし、80年のイラン革命に続く米国の機器禁輸措置に合わせ、同社は契約をキャンセルしている。イランは92年にロシア政府と原子力平和利用協定に調印した後、95年〜98年にかけてロスアトム社傘下のアトムストロイエクスポルト(ASE)社と、100万kWの同発電所をターンキーで完成させる契約を締結した。36年に及んだ同プロジェクトの経費は45億ドルに上ったとしている。

163体の燃料集合体の搬入記念式典にはイラン原子力庁(AEOI)のA.サレヒ長官やロスアトム社のS.キリエンコ総裁が出席。ブシェール発電所ですべてのシステムの試験段階が完了し、実質的な起動に向けた作業が開始されたことから、原子力平和利用における両国の協力関係も新たな段階に入ったと宣言している。

また、現地の政府系通信によると両国は同日、3種類の了解覚書(MOU)に調印しており、同発電所の安全操業を期するための合弁事業体設立などで合意。サレヒ長官は新たに10のウラン濃縮工場建設に適したサイト探しを実施中であると述べ、大統領命令が出され次第、来年3月にはそのうちの1か所で着工する可能性を明らかにした。

同長官はまた、独自の濃縮工場開発活動は、ロシアと結んだブシェール発電所向け燃料供給協定とは矛盾しないとの見解を提示。同発電所の運転寿命が40年〜60年であることから、ロシアが約束を厳守したとしても不足分を補う方法が必要だ。すべての燃料を国内生産したいわけではなく、IAEAによる燃料提供も要請しているが、提供条件がイランの希望と一致していないため、今後も必要な限り国内での濃縮を継続するとの意向を表明している。


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