大綱ヒア 産業界からも意見 海外展開を着実実施へ

第5回原子力政策大綱の見直しの必要性に関する有識者ヒアリングが31日行われ、五十嵐安治・東芝執行役上席常務、服部拓也・日本原子力産業協会理事長を迎えて意見を聞いた(=写真)。

五十嵐氏は、主に国際化対応の観点から、原子力政策の基本方針に大きな変化はなく、大綱の全面的な見直しは不要との考えを示した。ここ5年間の外部環境の変化に対応し、国が前面に立った国際展開方針として「二国間協定の戦略的締結促進」「新規導入国向けシステム輸出の官民一体の取組み」を明記することを提案した。

服部氏も、原子力産業の海外展開の観点から、政策大綱の見直しは不要と考えるが現行の政策を着実に推進していくことを期待すると述べた。海外展開を行う意義の検討をより深めてクリーン開発メカニズム(CDM)化への取り組みなど原子力産業の海外展開を国としての重要政策課題に位置づけること、規制や人材育成などの面で原子力産業のグローバル化のための施策を実施することを大綱へ盛り込むことを要望した。

原子力委員との質疑応答では、人材育成も国際競争時代を迎えており、英語の教材や教員確保が必要であることや、海外から日本に来て技術を身につけた場合にその資格が国際的に有効であることの重要性などについて議論された。また、規制のグローバル化にともない、トピカルレポートの採用、ASME等の民間基準採用、リスクベースの安全評価などの面で国の支援を求めた。

また、委員会に同席した平岡秀夫・内閣府副大臣から、相手国から廃棄物処分への対応について要求があるかと質問が出された。服部氏は、具体的な要求のあったべトナムの例を挙げ、日本での取り組みをベースに対応しているが、再処理まで踏み込んだ提案はしていないと回答した。さらに尾本原子力委員から、新規導入国には廃棄物に関して、IAEAのガイドラインで留意点として明記しており、基盤の弱い国に対しては、相互に連携することも重要ではないかと補足があった。

〈商社代表からも意見〉

第6回原子力政策大綱の見直しの必要性に関する有識者ヒアリングが1日行われ、小島順彦・三菱商事取締役会長を迎えて意見を聞いた。

小島氏は現在の原子力政策大綱の方向性について異存なく、全面的な見直しは必要ないとした。

国際展開にあたっては、官民連携とジャパン・イニシアチブによるシステム輸出の推進が重要であるとした。日本が国際競争に勝つためには(1)顧客(相手国)ニーズへの柔軟な対応(2)原子力人材の育成(3)国内原発の設備稼働率の向上(4)ファイナンスサポート――をポイントとして挙げた。また、核不拡散・安全面での体制強化にも留意を促し、相手国での原子力開発の安全性が確保される法的枠組みや組織・体制構築への支援、安全面でのリスク負担、IAEAとの連携強化など日本ができる協力を提示した。

〈大学、研究者からも聴取〉

第4回原子力政策大綱の見直しの必要性に関する有識者ヒアリングが8月24日行われた。赤井誠・産業総合技術研究所主幹研究員、小川徹・日本原子力研究開発機構原子力基礎工学研究部門長、関村直人・東京大学工学系研究科教授を迎えて意見を聞いた。

赤井氏は原子力を賢く使いこなすことがわが国の道との前提のもと、CO80%削減社会はオール電化(+水素化)が不可欠と説いた。小川氏は大綱の整理の基本的考え方は現時点で大きな変更の必要はないが、産官学が広く課題を共有し問題解決に取り組むための「場」を意識的に作り、技術競争激化の中で枢要的な知識やデータを自前のものとして確保することが重要との意見を述べた。


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