原子力機構 加速器でモリブデン製造 民間会社と共同検討

がんなどの核医学診断で世界的に必要とされているモリブデンなどの短寿命放射性同位元素(RI)の供給不安定さが増している中で、国内原子炉JMTRでの生産の必要性も検討され始めている一方、中長期的な観点から、加速器を使った生産のための研究開発が、日本原子力研究開発機構と民間企業が協力してスタートする。

原子力機構の基礎工学部門長が「原子力エネルギー基盤連携センター」のセンター長を兼務し、同センターに「加速器中性子利用RI生成技術開発特別グループ」を立ち上げる。同グループには、千代田テクノル、富士フイルムRIファーマ、住友重機械工業が参加する。

同グループでは、加速器で生成される高速中性子を利用したRI製造に関し、製造体制の実現性を検討し、産業界と協力して必要な技術基盤を形成する。課題としては(1)モリブデン99/テクネチウム99m製造に必要な技術基盤の形成(2)高強度・高速中性子生成のための研究開発(3)多様なRI製造に関する実用化可能性調査――を挙げ、原子力機構がRIの試作とRI製造のための要素技術開発・検討を行い、産業界側がRIの実用化に向けた要素技術開発と経済性評価を行う。

同事業は、科学技術振興機構が実施する大学・公的研究機関等で生まれた研究成果を基にした実用化をめざすための幅広い研究開発フェーズを対象にした技術移転支援制度「A―STEP」等を利用したもので、先ずは高速中性子生成と化学分離・精製を行い、標識化合物合成を行う計画だ。

同研究開発の中心的役割を果す原子力機構の永井泰樹・客員研究員は、「いろいろな情報やアドバイス、問い合わせをしてほしい」(電話029―282―5470)と呼びかけている。

モリブデン99の世界需要の95%を、カナダ、オランダ、ベルギー、フランス、南アフリカの5つの原子炉で製造しており、新しいものでも初臨界から45年以上を経過し老朽化が進み、故障で停止することも多くなっている。さらにいずれの炉も高濃縮ウランを使用しており、核拡散防止上、低濃縮ウランへの移行が求められているのが実状だ。

このため、世界のモリブデンの約38%をNRU炉で供給する最大の供給国カナダも、加速器を使ったモリブデン製造を検討し始めている。


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