仏の先進事例から学ぶ 地層処分シンポ 地域振興の方策など

経済産業省は12日、東京・渋谷区の津田ホールで、「放射性廃棄物の地層処分 広報強化月間」の行事の一環として、シンポジウムを開催(=写真)、地層処分先進国のフランスより、設置地域での理解活動や振興事業に携わる有識者らを招き、取組状況を聞くとともに、国内での事業進捗に資するため議論した。

まず、苗村公嗣・資源エネルギー庁放射性廃棄物対策室長が国内の高レベル廃棄物について、09年末現在、既にガラス固化体で約2万3000本相当が発生しており、今後も21年までに累計発生量が同約4万本に達するところ、02年に最終処分に関する法整備がなされて以来、未だ候補地があがっていない緊迫した状況を説明した。

一方、フランスでは、1991年制定の放射性廃棄物管理研究法に基づき、処分研究、サイト選定が進められ、現在、ムーズ県とオート・マルヌ県の境界に位置するビュール地下研究所周辺の約30平方キロメートル区域が候補地として決定し、14年の設置許可申請、25年の処分事業操業開始を目指している状況だ。同国での取組内容について、ジェラルド・ウズニアン放射性廃棄物管理機構(ANDRA)国際部長、エリック・ラフォン・オート・マルヌ県公益事業共同体(GIP)副委員長、ステファン・マルタン地域情報・フォローアップ委員会(CLIS)委員がそれぞれの立場から発表した。

ウズニアン氏は、これまで20年間の処分事業の取組を総括して、技術的・科学的観点から実証可能で、「安全性は確保できるとの確証」を得たとするとともに、明確な法的枠組に加え、意思決定に時間が必要とし、社会的な課題でもあることを強調した。

地域振興について、ラフォン氏は、環境・エネルギー、企業・テクノロジー、インフラの3つを基軸に、08〜09年に、オート・マルヌ県内で計418のプロジェクトに支援を施し、立地地域の経済発展につながった成果を述べた。また、マルタン氏は、処分実施主体と地元住民との仲介として、情報提供、研究監視、協議などを行うCLISの取組を述べた上で、両県とも原子力施設を立地していないことから、不安を払拭すべく住民への根気強い説明が必要なことを強調した。

続くパネルディスカッションでは、崎田裕子氏(ジャーナリスト)、杤山修・原子力安全研究協会処分システム安全研究所長、松田美夜子・前原子力委員らが登壇し、場所選定のプロセス、市民の意見を反映する仕組み、地域振興の方策などについて、フランス側と質疑応答がなされた。


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