「2度C抑制」の濫用に警鐘 IPCC有志

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の評価報告書の執筆などに関与してきた日本の有識者有志が9月30日、東京都内で記者会見し、多くのメディアなどによって、IPCCが「地球平均気温の上昇を、産業革命以前より2度C以内に抑制すべき」と結論づけているかのような論調がなされているが、「これは全くの誤解であり、政治的決定に濫用されている」と警鐘を鳴らした。

有識者10名の連名で、記者会見はそのうちの茅陽一・地球環境産業技術研究機構副理事長(=写真)、松野太郎・海洋研究開発機構特任上級研究員、沖大幹・東京大学生産技術研究所教授の3名が行った。

会見では、「人為起源温室効果ガスの増加による気候変動は間違いなく進行しており、迅速に対応を進める必要がある」と強調する一方、IPCCの報告書は、「政策決定に役立つもの」ではあっても「特定の政策を推奨するもの」ではない、との原則の下に編纂されている、と改めて説明した。

沖教授は「温暖化がどの程度深刻なのか。その対策にどの程度のコストをかけるべきか。いろいろな判断があってしかるべきだ」と述べ、茅氏も個人的な見解と断ったうえで、「『IPCCのカテゴリー1の2〜2.4度C』の範囲に抑えるためには、温暖化ガスを2080年以降、マイナスの放出(放出量より吸収量を多く)にしなければならず、これはほとんど困難だ」と語った。


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