国際原子力開発 発足へ 電力・メーカー他13社 まずは、ベトナム受注獲得を

原子力発電新規導入国に対し、わが国のプロジェクト受注に向けた提案活動を行う新会社「国際原子力開発株式会社」(略称JINED、ジーネッド)が22日に正式発足する。新会社は今後、新興国のニーズを踏まえ、政府による制度整備等の支援を仰ぎつつ、「官民一体体制」での原子力国際展開に向け、重要な役割を担うこととなる。出資構成は、北海道、東北、東京、中部、北陸、関西、中国、四国、九州の電力9社と、東芝、日立製作所、三菱重工業、技術開発を支援する産業革新機構の計13社で、資本は2億円(資本金1億円、資本準備金1億円)。同機構は10%出資する。社長(非常勤)には、東京電力フェローの武黒一郎氏が就任する。

新会社設立について、電気事業連合会の清水正孝会長は、15日の定例会見で、@安全かつ信頼性が高い原子力発電所の建設・運転・保守のノウハウの海外提供を通じ導入国の安全性・信頼性向上に寄与A日本の原子力産業の技術力や人材の厚みを維持・強化B国産炉の安全運転等に関してより多くの知見を獲得――することで、国内原子力産業の基盤強化・発展にもつながるよう期待した。

当面の取組としては、ベトナム・ニントゥアン省の原子力導入プロジェクト受注に向け、同国のニーズを踏まえた建設計画や人材育成計画の提案などの活動を進めていくが、清水会長は、「わが国原子力の国際プレゼンスを高める重要な試金石」として、今後の受注獲得に意欲を示している。

ベトナムとの原子力協力については、現地予備調査への支援、原産協会を通じた調査団受け入れ、展示会への出展など、これまでに民間レベルでの交流が数多く行われているほか、政府間では08年に両国の協力文書への調印、今秋からは、原子力協力協定締結交渉が進んでいる。JINED設立に先立ち、7月には準備室が設置、8月には、官民合同の訪越ミッションによる首脳陣への包括的な提案も既に行われている。

なお、JINEDは、東京・千代田区内のビルにオフィスを置き、取締役8名(うち常勤1名)、監査役3名、従業員9名でスタートすることとなっている。これに伴い、東京電力は15日、電事連原子力部長の高橋祐治氏の同社への出向を発表、同氏は業務執行取締役に就任する予定。

同新会社の設立構想が練られる中で、国の関与をどうするかが1つの焦点となったが、産業活力再生特別措置法に基づき設立された特殊株式会社の産業革新機構(出資金920億1000万円、うち政府出資820億円)の機能を活用し、産業や組織の壁を超えた「オープン・イノベーション」の考え方に基づき、中長期の産業資本の提供や役員派遣などが行われることになった。

   ◇   ◇   

大畠章宏経済産業大臣は15日、今回の新会社設立発表に対し、「新成長戦略」に掲げる主要課題の1つとなる原子力産業の国際展開を図る上での意義を強調し、「世界に冠たるわが国の技術や経験を結集し、新規導入国に展開していく大きな原動力」などと期待をかけた。さらに、関係省庁とも連携の上、原子力協定の締結促進などに最大限、取り組んでいく考えを述べた。


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで