「原子力の日」記念 第42回高校生小論文 私たちの主張−原子力を考える

【日本原子力文化振興財団最優秀理事長賞】愛媛県立北条高等学校3年 大堀 海人 高レベル放射性廃棄物の最終処分

昨年、私たちの学校は高校生地球温暖化防止事業の指定を受けた。「すぐにできることから二酸化炭素の排出を減らそう」のテーマのもと教室の電気をこまめに消すことや、ゴーヤで緑のカーテンを作るなどの活動をした。その結果、電気量を3パーセント削減できた。この活動を通して、無駄使いをなくすだけでなく、電気エネルギーの確保をもっと真剣に考えなければいけないことに気がついた。

現代の生活にとってなくてはならない電気エネルギーは、もちろん無尽蔵ではない。日本の発電量の大部分を占めている火力発電の燃料である石炭、天然ガスそして石油といった天然資源は近い将来限界がくる。また、地球温暖化の原因である二酸化炭素を多く排出する。

水力発電は水流を利用するため、二酸化炭素を排出しないが、発電所を建設するには、川に隣接する大量の森林を伐採しなければならない。

それらに比べ、原子力発電は二酸化炭素を排出することなく発電をするため、クリーンなエネルギーといえる。さらに、原子力発電の燃料であるウランやプルトニウムは、一度使った燃料の多くを再利用することができ、他の資源にはない利点がある。

愛媛県の四国電力伊方発電所でもプルサーマルが始まった。原子力発電には、使い終わった燃料の中に、まだ燃料として使用できるウラン燃料が残っている。それを再利用するのが、プルサーマルである。

しかし、ここで1つの問題が浮上する。それは、高レベル放射性廃棄物と呼ばれる再利用できなかった一部の使用済燃料の最終廃棄処分である。その処分方法として、地下深くに埋める地層処分が検討されている。

現在、アメリカやロシアなどの広大な国土を持つ国以外では、処分地の確保という問題を抱えている。もちろん日本も例外でなく、処分地の候補すら名乗りを上げる自治体はない。

処分地が決定できない最も大きな理由は、地域住民の不安である。その不安の原因は放射能の危険性である。第2次世界大戦中に広島と長崎に投下された原子爆弾は、今も多くの日本人の心に深い爪あとを残している。また、海外では、1986年にチェルノブイリで原子炉の爆発が起こった。10万人以上が避難を余儀なくされ、推計では数万人から数十万人が被ばくしていると言われている。

地層処分は、地下300メートルより深い地層に埋めるため、地震の影響を受けやすいと思われている。しかし、実際には火山や活断層の影響を受ける地域を避ければ、地下の方が地震の揺れは小さくなるので放射能が漏れることはまずない。さらに、地下なら人の手の届きにくい場所に埋めるため、テロなどの人為的な被害を心配する必要もなくなる。

しかし、理論上の安全だけでは、地域住民の不安を消すことはできない。住民の立場からすれば、自分たちの足元に不発弾が埋めこまれているように感じてしまう。さらに、放射線自体は目に見えないので、身体に異常が発生してからでないと、放射性物質が漏れたことに気がつかないという問題もある。

私は現在、総合研究で、GM計数管と「はかるくん」を使用して自然放射線の研究を行なっている。その研究を通して、私たちの学校の東の高縄山は、領家帯という花崗岩地帯で、他の地域より自然放射線の測定値が大きいことを知った。1つの岩石から出る放射線は低レベルでも、山全体が花崗岩でできていれば放射線の総量は多い。反対に、原子力発電の廃棄物は高レベルではあるが、大量に集めないかぎり放射線の総量は多くならないと考える。

また、しまなみ海道の来島海峡第三大橋の歩行道での自然放射線の測定では、海の上では地下からの放射線はほとんど海水で止められることが分かった。地下、300メートルに埋めれば、地下の岩石や周囲の海水で十分に放射線を止められる。

地層処分の候補地に関しては、普天間基地の移設問題と同様に、地層処分に名乗りを上げる自治体は存在しない。もし、処分候補地に選ばれても、地域住民からの反対は避けられない。つまり、人の住んでいない場所を選ぶ必要がある。だが、日本はアメリカなどのように広大な土地を持っていないうえに、複雑な地層になっているので、人がいなくて地層処分できる場所は限られてくる。

私は処分場所としては、日本に約6000島以上ある数多くの無人島が最適であると考える。その無人島の中から地層の条件を考慮すれば、いくつかの処分候補地を選ぶことができる可能性があると思う。

また、私は高レベル放射性廃棄物の処分には、将来宇宙処分も可能であると考える。しかし、打ち上げに失敗した際に放射性物質が放出してしまうというリスクや、宇宙に打ち上げるためのコストが多くかかるなど、今の技術では難しい。何より宇宙という空間を自分たちのゴミで汚染するのは好ましくない。

原子力は、人類の科学発展において最も強力なエネルギーである。原子力のエネルギーは、人の命を奪うことも、救うこともできるだけでなく、地球を滅ぼす力も、救う力も持っている。もし、今世界にある核兵器を使えば、地球を破壊することもできる。だが、もし原子力発電を安全に有効活用できれば、環境問題を解決することができる。

原子力エネルギーを有効活用することは、21世紀に生きる私たちにとって、地球を守り、人類が存続するための義務であり、責任である。原子力という大きな力には大きな責任が伴う。その責任を果たすことが、私たちが次の世代に美しい地球を残すための課題である。


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