原電のクリアランス物の再利用拡大 社会的受容めざす

原産協会は10月19日、東京で第7回会員情報連絡協議会を開催した。同会合において日本原子力発電株p止措置プロジェクト推進室長の苅込敏理事が、「東海発電所の廃止措置計画と現状」と題した講演を行い、主に解体撤去の工法と解体撤去物の処理・処分について、商業用原子炉の廃炉としては最初の事例である東海発電所廃止措置工事の状況を説明した。

また東海発電所廃止措置は、05年に制定されたクリアランス制度についても初めての適用事例であり、現在同社は電力各社と協力し、クリアランス制度の定着に向け、クリアランス物再利用を実践している。

以下、リサイクルも含め、廃止措置工事で発生する撤去物の処理処分を中心に、苅込理事の講演内容を紹介する。

日本初の商業用原子力発電所である日本原子力発電鰍フ東海発電所(茨城県東海村)の廃止措置工事が進行している。今後、原子炉領域の解体撤去など廃止措置の主要工事を経て、2020年までに工事を完了する計画だ。(全工期20年)

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同炉は1966年7月25日、商業運転を開始した、黒鉛減速・炭酸ガス冷却、天然ウラン燃料=電気出力16万6000kWの原子炉。英国から輸入し、耐震設計などで日本独自の改造を加えたもの。日本で唯一のガス炉であったこともあり、経済性の観点から、98年3月31日をもって約32年間続いた営業運転を終了している。

同社は、営業運転終了後直ちに炉内の燃料(約1万6000本)の取り出しを開始、その後01年10月には原子炉等規制法に基づく「原子炉解体届」を経済産業省に提出、同12月から廃止措置に着手した。現在、自社開発した遠隔切断装置により原子炉で発生した熱で蒸気を発生させる熱交換器(4基)の撤去作業などを行っている。

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同炉の廃止措置で発生する撤去物の推定量は、表の通り。ガス炉は、出力の割には大きいため工事で発生する放射性廃棄物は、軽水炉に比べ多いが、撤去物の約9割は「放射性廃棄物でない廃棄物(NR)」もしくは「放射性廃棄物として扱う必要のないもの」(クリアランス対象物)とすることが可能。

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撤去物の処理処分に関し、放射性廃棄物については、炉心等廃棄物は「余裕深度埋設施設」(50メートル以深の地下)に、低レベル放射性廃棄物は「浅地中コンクリート・ピット埋設施設」に、極低レベル放射性廃棄物は「浅地中素掘りトレンチ埋設施設」に処分される。一方、クリアランス対象物や「放射性廃棄物でない廃棄物(NR)」については、可能な限り再利用していく方針だ。

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「クリアランス」とは、原子力発電所の廃止措置や運転・補修などに伴って発生するもののうち、「放射性物質として扱う必要のないもの」(クリアランス対象物)について、法令等で規定された手続きに基づき、資源としてリサイクル可能な有価物(スクラップ金属など)や一般の産業廃棄物として取り扱えるようにすること。

海外ではすでに多くの国でクリアランス制度が運用されており、日本でも05年に法令が改正され、同制度が導入された。

クリアランスの基準については、金属やコンクリートがどのように再利用または廃棄物として処分されたとしても、人体への影響は無視できると国際原子力機関が認めている年間0.01ミリシーベルトを超えないよう、放射性元素ごとに放射能濃度(ベクレル/グラム)の制限が決められている。これは、私たちが日常生活で大地や食物から受けている自然放射線(世界平均:年間2.4ミリシーベルト)の100分の1以下の値だ。

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04年の総合エネルギー調査会・廃棄物安全小委員会におけるクリアランス制度の検討過程で、電気事業者は「制度定着に向け、当面事業者が自ら率先して社会の理解を得つつ、再生利用等を進める」と表明しており、同社はこれに沿ってクリアランスした金属(炭素鋼)の再利用を実践している。これまでに東海村の伊藤鋳造鉄工所で、クリアランス金属を原材料に金属遮蔽体やベンチ・テーブルなどを製作している。クリアランスベンチについては電力会社などの協力の下、各地のPR館などに設置し、理解促進につとめている。国もこの取り組みを応援しており、文科省副大臣室、内閣府、環境省などにもクリアランスベンチが設置された。

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今後、電力業界は、クリアランス物再利用の取り組みを拡大しつつ、社会の理解と制度定着の度合いを見定めた上で、制度本来の趣旨であるフリーリリースを実現したいと考えているが、そこでは加工業界や建設業界の協力が必要となる。これら業界の企業を会員に有する原産協会としても、積極的にクリアランス物の再利用を支援していく方針だ。


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