【インタビュー】加納時男・前参議院議員に聞く 「原子力こそ重要」 変らぬ信念 国際活動でも

今年7月、2期12年の参院議員を引退し、秋の叙勲で旭日重光章を受章した加納時男・前参議院議員に、その歩んできた東京電力の社員・役員時代、経済団体や国際委員会メンバーとしての活動、議員時代の活動などについて聞いた。同氏の活動のキーワードは、「幅広い視野と活躍の場」だ。    (河野 清記者

――今までのグローバルかつ幅広い分野での活動を振り返って。

加納氏 科学万博の電力館長や旧ウラン協会の日本人初会長なども務めたが、国際的経歴で特徴的なものは、「持続可能な開発のための世界経済人会議」(WBCSD)(92年地球サミットに対応して、世界の経済人が結集して設置した会議。スイス・ジュネーブに本部)の副会長を務めたことか。私の前任は豊田章一郎氏、後任はいまの清水正孝・東京電力社長だ。そこでの議論は、世界のエネルギー問題を考える時、エネルギー・資源の安定供給と環境の持続可能性を常に考慮しなければならないということだ。非化石エネルギーの中で、原子力ほど優れたものはない、と言うのが私の信念だ。

この考えは、電力会社の社員時代から役員、国会議員に至るまで、一貫して変っていない。原子力は膨大な設備投資を要し、経営的負担も大きいが、企業としても日本としても、世界を視野に入れても必要な事業だ、と考えてきた。そんな原子力発電所から出てくる電気だからこそ、「大切に使ってほしい」と言うのが私の最大のセールス・トークだ。

――原子力発電には、燃料サイクルをどうするかという課題が常につきまとう。

加納氏 現在の原子力政策大綱の策定時には、たいへん良い議論を行った、と思う。全量再処理からワンス・スルーまで技術、経済的評価、資源論、環境負荷などあらゆる面から議論したうえで、原則全量再処理路線に使用済み燃料の中間貯蔵という柔軟性を加えたうえで、いままでのリサイクル路線を継承した。これは、唯一非核兵器国で再処理を許された日本の強みを生かすことでもある。

――原子力を取り巻くいまの国内外の情勢をどう見るか。

加納氏 明らかに国内外の世論は変ってきた。以前、参院の決算委員会でも指摘したのだが、日本の教科書には「原子力発電ではなく、風力・太陽光でエネルギーを供給すべき」とか、「米国TMI事故で放射能被害」、「米国では原子力発電所が住民投票の結果で廃止に」、「原子力発電所からの温排水による熱汚染」などの誤った表現が多々あった。これらの問題点を具体的に指摘し、当時の有馬文科相にも認めてもらって、いまは改訂することができた。

今後の課題は、高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定、新しい点検制度を含めた原子力発電所稼働率の向上、日印原子力協力の推進だ。

――民主党中心政権についての感想は。

加納氏 民主党の野党時代に、自民・公明・民主党で一緒に現在のエネルギー基本法を議員立法で作った。その流れの中で、政権交代後もエネルギー政策は自民党時代と大きく変っていない。民主党の外国へのいわゆる「トップ・セールス」以前から、甘利明・経産相時代にカザフスタンに官民大参加団を送って、原子燃料確保の先鞭を付けた実績がある。

――民主党の「政治主導」については。

加納氏 「政治主導」という言葉を聞くと不愉快になる。その対語は「官僚主導」だろうが、「政治主導」をことさら強調するのは、逆によほど自信がないからだろう。彼らの高い専門能力や蓄積された知識・経験などを生かすのがまさに政治主導だ。特に外交ではそうだ。

――今後の活動は。

加納氏 今後は一市民として、いままでのさまざまなご支援に対して、ご恩返しをしていきたい。


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